(2019年7月) 「柔道」がそのまま "Judo" で英語として流通しているのは知られているが、この「柔道」から派生した「柔道家」という言葉がそのまま "Judoka" という英語になっている事例に遭遇したので報告しよう。
- 「柔道家」の意味で "Judoka" という英語が使われていたのは、Frontiers in Physiology 誌に掲載された研究。
- この研究は "Independent and Combined Effects of All-Out Sprint and Low-Intensity Continuous Exercise on Plasma Oxidative Stress Biomarkers in Trained Judokas" というタイトル。 タイトル末尾の "Judokas" というのが "Judoka" の複数形。
- 研究グループのメンバーはチュニジア、ドイツ、英国、イタリア、カナダであり日本人は含まれていない。
- "judoka" は文中において小文字で始まったり(male judokas)大文字で始まったり(elite Judokas)している。
- 論文中では、"judo athlete" という言葉が "judoka" と同じ意味で使われている。
- 参考文献を見ると、今回のチュニジアの研究者は 2011年の研究でも "judoka" という英語を使っている。
- この 2011年の研究の参考文献をたどると、この研究者は 2009年の研究でも、"judoka" という語を使っている。 この論文は本来はフランス語であり、フランス語版でも "judokas" という語が使われている。
- Pubmed(研究データベース)で "judoka" で検索すると、100以上の論文がヒットする。
- 1966年の文献ですでに "judoka" という英語が使われている。 この文献では「投げ技」も "nage-waza" という英語で使われている。
- 1976年に発表された文献にも "judoka" が使われている。 本来はフランス語の文献。 研究者に日本人は含まれていない。
- ドイツの文献(1984年)やカナダの文献(1991年)でも "judoka" という語が用いられている。
- Pubmed で judoka[title/abstract] or judokas[title/abstract] で検索してヒットするのが139件なのに対して、judo athlete[title/abstract] or judo athletes[title/abstract] で検索してヒットするのは173件。 上記のように "judoka" と "judo athlete" が併用されるケースも多いだろうが、"judoka" という語が少なくともその筋の人間の間では相当に普及していると考えて良いだろう。
- 検索エンジンで "judoka" で検索すると、"judoka" という英語が一般的に流通している模様。
- オンライン辞書で "judoka" で調べると普通に載ってた。 "judoka" が英語として使われだしたのは 1950~1955年。 語源として「jūdō judo + ka person」と記載されている。 「家」が「person(人)」だということ。 さらにご丁寧に、"ka" の語源が中国語の "jiā" であるとまで説明されている。
- オンライン辞書の用例に "judoka (judo fighter)" とある。 また、Wikipedia に "A judo practitioner is called a judoka.(柔道をする人が柔道家と呼ばれる)" とある。 したがって "judoka" のバリエーションは "judo athlete"、"judo fighter"、"judo practitioner" といったところか。 個人的には、町の柔道道場に通う小学生は "judo practitioner" ではあっても「柔道家」ではないと思うが。
- "judo-ka" と間にハイフンを入れる言い方はしないらしい。 Pubmed では用例が見つからず、検索エンジンでもロクに用例がなかった。