タンパク質の摂取量が多いほうが老化に伴う炎症が軽微だった

(2019年6月) 先月号の "Current Developments in Nutrition" に掲載されたタフツ大学の研究で、タンパク質(特に植物性)の摂取量が多い中高年者は老化に伴う炎症が比較的軽微だという結果になっています。出典: Higher Protein Intake May Curb Age-Related Inflammation

研究の方法

平均年齢60才の男女 2,061人(56%が女性)を対象に、1998~2001年および 2005~2008年の2回にわたり食生活に関するアンケート調査と血液や尿の検査を実施しました。 血液や尿の検査では炎症や酸化ストレスの程度を示す物質の体内量を調べ、その結果に基づいて炎症&酸化ストレス(*)のスコア(IS)を算出しました。 ISの数値が低いほど炎症や酸化ストレスが軽微です。

そして、追跡期間(平均6.6年間)におけるタンパク質の摂取量とISの変化との関係を分析しました。 分析においては摂取カロリー(食事量)も考慮しました。
(*) 研究論文でもプレスリリースでもインフラメージング(inflammaging)という言葉が使われている。 インフラメージングとは老化に伴う慢性的な炎症のことで、インフラメージングがひどいと虚弱のほか高血圧・糖尿病・心臓病・ガンのリスクが増加する恐れがある。

結果

タンパク質摂取量が最大のグループのISが0.31だったのに対して、摂取量が最少のグループでは0.77でした。

タンパク質を動物性と植物性に分けて分析すると、植物性タンパク質では摂取量によるISの差が統計学的に明確でしたが、動物性タンパク質では微妙でした:
  • 植物性タンパク質 - 摂取量最大 0.14、摂取量最少 0.89、P-trend = 0.001
  • 動物性タンパク質 - 摂取量最大 0.31、摂取量最少 0.70、P-trend = 0.05

コメント

研究者は次のように述べています:

「中高年者がタンパク質の所要量を満たしておくのは筋肉量・筋力・身体機能の維持にとって大切ですが、今回の結果から、老化に伴う炎症反応の変化を相殺するのにもタンパク質が関わってくると思われます」

原文: Meeting protein needs in aging populations is important not just for maintenance of lean muscle mass, strength, and physical function, but our work also indicates protein may have a role in counteracting age-related changes in the inflammatory response.)
別の研究者は次のように述べています:

「タンパク質の所要量は年齢・体重・性別などで変わってきます。 例えば体重75kgの成人であれば、毎日60gのタンパク質が必要となります(以下略)」

「今回のデータでは大部分の人がタンパク質を十分に摂っていましたが、人並みよりも少しタンパク質を多く摂っている人は炎症の状態が比較的良好でした。 今回の結果から、高齢者はタンパク質(特に植物性のもの)を十分に摂るように心がけると、インフラメージングが関与する虚弱・病・疾患(*)がもたらす負担が軽減されるかもしれません」

原文: The recommended daily amount of protein for adults is calculated based on several factors, including age, weight, and gender. As a broad example, an average 165-pound adult would need 60 grams of protein per day...

While most study participants were consuming adequate amounts of protein, those who took in a bit more were doing better in terms of their inflammation status. Our research suggests that including enough protein in the diets of older adults, especially from plant sources, may help reduce the burden of frailty, sickness, and disease that is associated with the chronic inflammation of aging.)

(*) "sickness" を「病」、"disease" を「疾患」と訳しました。 "sickness" と "disease" の違いがよくわからなかったのですが、"Illness, disease, and sickness absence..." というタイトルの文献や、QuoraというBBSを見ると、"sickness" は人として社会的に機能できない状態という感じのようです。 「病欠」のことを英語で "sickness absence" と言いますが、"disease absence" とは(滅多に)言いません。

上記の文献に Illness・Disease・Sickness の関係を示す概念図が掲載されています(著作権が心配なのでリンクにとどめます)。 この概念図によると、Sickness は Disease に含まれ、Disease は Illness に含まれます。 つまり、Illness が最も意味範囲の広い語で「体の不具合」という感じです。 そして、「体の不具合」のうち医師の診察を受けて病気であることが認められたものが Disease です。 そして、Disease のうち生活や仕事に支障をきたすものが Sickness という感じでしょうか。 上記の文献で Sickness だけは明確に定義にされていないのですが。