パレオ・ダイエットの弱点

(2019年7月) "European Journal of Nutrition" に掲載されたオーストラリアの研究によると、パレオ・ダイエットを続けているとTMAOがたくさん発生してしまう恐れがあります。

TMAOについて

赤身肉・海産物・卵・乳製品などの動物性食品(1)を食べると、そうした食品に含まれているカルニチンやコリンなど(2)から腸内細菌(3)がトリメチルアミン(TMA)という物質を作り出します。

(1) 赤身肉は多量のカルニチンを含有しますが、赤身肉よりも海産物のほうがTMAの発生量が多いというデータもあります。

(2) ベタイン、レシチン、クレアチニンからもTAMAが作られますが、生産量は多くありません。

(3) TMAを生産するのは、主としてファーミキューテス門とプロテオバクテリア門の腸内細菌です。

そうして作られたTMAがフラビン含有モノオキシゲナーゼ3(FMO3)という肝臓の酵素によって変換されて生じるのがTMAOです。 腸内細菌もTMAからTMAOを作り出します。 逆にTMAOからTMAを作り出す腸内細菌もいます。

これまでの研究で、TMAOの血中濃度が高い人は心臓・血管・腎臓の病気になりやすいことが示されています。 赤身肉の摂取量が多い人が心臓病や脳卒中になりやすいのもTMAOのせいかもしれませんが、TMAOそれ自体が健康に悪影響をおよぼすのか、それともTMAOが何か他の有害なモノの程度を表す目安でしかないのかは不明確です。

研究の方法

パレオ・ダイエットを1年を超えて続けている(自己申告)男女44人と、比較的健康的な普通の食生活を続けている男女47人(以下「一般人」)を対象に、過去3日間の食生活を尋ねたり腸内細菌の種類構成を調べたりしました。

パレオ・ダイエットの44人は、穀類や乳製品の摂取習慣に応じて「純正パレオ」と「パレオ・マークII」に分けられました(22人ずつ)。 穀類の摂取量が1食分/日未満かつ乳製品の摂取量が1食分/日未満の場合を「純正パレオ」とみなしました。

結果

  • 一般人に比べて「純正」も「マークII」も難消化性デンプンの摂取量が少なかった(1日の摂取量が一般人4.48gに対して、純正は2.62gおよびマークIIは1.26g)。
  • 普通の食生活の人たちに比べて「純正」も「マークII」も、TMAを作り出す Hungatella 属の細菌に腸内にたくさん住み着かれていた。
  • 「純正」は「マークII」や一般人よりもTMAO血中濃度が高かった(純正9.53μM、マークII5.47μM、一般人3.93μM)。
  • 全粒穀物摂取量が少ないとTMAO血中濃度が高いという関係が見られた(γ=-0.34。そこそこの強さの関係)。 (そして「純正」も「マークII」も当然ながら全粒穀物摂取量が少なかった)
この結果に基づき研究グループは「(パレオ者は)腸・心臓・血管の健康を維持するため全粒穀物など食物繊維が豊富な食品を色々と食べる必要があるかもしれない」と述べています。