精神的なストレスが続く女性は脳細胞が傷みやすかった

(2019年5月) "Neurobiology of Aging" 誌に掲載されたヨーテボリ大学などの研究によると、ストレスが脳の神経変性プロセスに関与している恐れがあります。
著者: Lena Johansson et al.
タイトル: Longstanding psychological stress in relation to biomarkers of neuronal dysfunction in cerebrospinal fluid: a 25-year follow-up study in women

神経変性プロセスとは

「神経変性プロセス(Neurodegenerative processes)」の意味を検索で調べると、"Series Introduction: Neurodegeneration: What is it and where are we?" というコロンビア大学の研究グループが著した文献(2003年)が見つかりました。

この文献での言葉の使われ方を見ると「神経変性プロセス」はそのまま「神経変性のプロセス」という意味で、「神経変性プロセス」という用語ではない模様です。 そして、「神経変性(Neurodegeneration)」とは「ニューロン(神経細胞)の構造や機能が失われること」であると述べられています。 神経変性疾患の例としてアルツハイマー病・パーキンソン病・ハンチントン病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられていますが、他にも注目されていない神経変性疾患が多数存在すると述べられてもいます。

"Series Introduction: Neurodegeneration: What is it and where are we?" における「神経変性プロセス」という言葉の使われ方を、この記事の最後に記載しています。(またムダな労力を使ってしまった) 興味がある方はご覧ください。

研究の方法

81人の女性を対象に、中年(平均年齢49才)のときに精神的なストレスの程度を調べたのち、老年(平均年齢74才)のときに脳脊髄液(CSF)を採取して神経変性の程度を示す物質の濃度を調べました。

結果

中年のときに精神的ストレスを抱えていたグループ(20人)はストレスが無かったグループ(61人)に比べて、CSF中に神経変性の程度を示す物質(*)が高濃度で存在しました。
(*) VILIP-1(visinin-like protein-1)とミエリン塩基性タンパク質。 VILIP-1やミエリン塩基性タンパク質(MBP)のCSF中濃度にはニューロン損傷の程度が反映される。 VILIP-1は脳卒中後に増加することで知られる。

精神的なストレスが長期間にわたり続いていると(中年期の精神的ストレスに関するアンケートで2~3回もストレス有りと判定された)VILIP-1のCSF中濃度が増加していました。

これまでの研究でも、精神的なストレスが続いている人は認知症やアルツハイマー病になりやすいことが示されています。

「神経変性プロセス」の用例

上述の "Series Introduction: Neurodegeneration: What is it and where are we?" において「神経変性プロセス」という言葉は次のように使われています:
「疾患(神経変性疾患)が真に散発性である人たち(大部分の患者がこれに当てはまる)では、神経変性プロセスへの遺伝子的な影響は最低限であるように見受けられる。 神経変性プロセスの開始への関与が強く疑われるのは(遺伝子的要因ではなく)毒性の環境的要因である。(For those in whom the disease is truly sporadic, which is the vast majority of patients, it appears that any genetic contribution to the neurodegenerative process is minimal. Instead, toxic environmental factors may be the prime suspects in initiating neurodegenerative processes.)」
「ニューロン経路には細胞的な冗長性(余裕)があるのが常であるため、(神経変性疾患の)症状の始まりは疾患の始まりと一致しない。 症状の始まりは、特定の経路に残存するニューロンの数がその経路が正常な機能するのに必要な水準以下にまで減ってしまった時期と一致する。 したがって、(神経変性)疾患は(神経変性の症状の始まりより)数ヶ月から数年は早く生じている。 疾患の発生が症状の発生にどれだけ先んじるかは神経変性プロセスが進展する速度により異なる。(Because, almost invariably, there is significant cellular redundancy in neuronal pathways, the onset of symptoms does not equate with the onset of the disease. Instead, the beginning of symptoms corresponds to a neurodegenerative stage at which the number of residual neurons in a given pathway falls below the number required to maintain normal functioning of the affected pathway. This means that the onset of the disease occurs at some earlier time, which, depending on how fast the neurodegenerative process evolves, can range from a few months to several years.)」
「特に感染症などの介入性有害要因が影響するときに神経変性プロセスが突如として加速される可能性は排除できないが、ニューロンの死滅ペースは神経変性疾患が自然に進行する過程の全体を通じてほぼ一定である可能性が高い。 しかしながら、疾患の病状と残存ニューロン数の関係は必ずしも直線的ではないし固定的ですらない。 したがって、患者が多数の細胞(脳細胞)を失っていても長期間に渡り病状に変化が見られず、ニューロン残存数が機能的な閾値を割り込んだとき突如として病状が悪化することもある。 (Although we cannot exclude that the neurodegenerative process may suddenly accelerate, especially under the influence of intercurrent deleterious factors such as infection, it is more likely that the rate of neuronal death remains about the same throughout the natural course of the disease. Yet the relationship between the clinical expression of a disease and the number of residual neurons does not have to be linear or even constant. So a patient may remain clinically unchanged during a prolonged period of time, despite a loss of many cells, and then abruptly deteriorate as the number of neurons drops below a functional threshold.)」