赤身肉と大腸がんリスクの関係は遺伝子的な体質により異なる?

(2019年7月) これまでの研究で赤身肉の摂取量が多い人は大腸ガンのリスクが高いことが示されているが、"Nutrients" 誌に掲載されたポーランドの研究によると、赤身肉と大腸がんリスクの関係には遺伝子的な体質が影響しているかもしれない。

研究の方法

大腸ガン患者197人と健常者104人(計301人。38~81才の男女。喫煙者は含まない)の赤身肉摂取量と大腸ガンのリスクとGST関連遺伝子(GSTT1・GSTM1・GSTP1)のタイプとの関係を調べた。

結果

  1. GSTT1・GSTM1・GSTP1の全てについて遺伝子のタイプがポリモーフィズム注1ではない人(301人中65人注2)では、赤身肉摂取量と大腸ガンのリスクとの間に関係が見られなかった
  2. GSTT1・GSTM1・GSTP1のいずれかにおいて遺伝子がポリモーフィズムの人(301人中236人注3)では、赤身肉の摂取量が多い場合には少ない場合に比べて大腸ガンのリスクが3.1倍だった。
  3. GSTM1遺伝子がポリモーフィズムの人(301人中139人)では、赤身肉の摂取量が多い場合には少ない場合に比べて大腸ガンのリスクが3.8倍だった。
  4. GSTP1遺伝子がポリモーフィズムの人(301人中168人注4)では、赤身肉の摂取量が多い場合には少ない場合に比べて大腸ガンのリスクが3.4倍だった。
  5. GSTT1遺伝子がポリモーフィズムの人(301人中52人)では、赤身肉摂取量と大腸ガンのリスクとの間に関係が見られなかった

注1 ポリモーフィズム(polymorphism、多型)とは遺伝子のバリエーションのこと。 「ポリモーフィズムではない人」とは「最も一般的なタイプの遺伝子の持ち主」ということ。 「ポリモーフィズムの人」は比較的少数派ではあるが異常な遺伝子の持ち主というわけではない。

注2 GSTT1とGSTM1とGSTP1のうちどれか1つでもポリモーフィズムであれば条件から外れてしまうので65人しかいない。

注3 GSTT1とGSTM1とGSTP1のうちどれか1つでもポリモーフィズムであれば条件に合致するので236人もいる。

注4 168人は301人の過半数だが、これはGSTP1はポリモーフィズムの種類が多いためかもしれない。 これとかこれとかこれといった文献を見ると、GSTT1とGSTM1はポリモーフィズムが2通り(present と null)だけ(分析手法の関係でアレルのホモ接合体とヘテロ接合体の区別ができない)だがGSTP1はポリモーフィズムの種類が多い模様。 遺伝子のバリエーションが生じる箇所が2ヶ所あるっぽい。

GSTとは

GSTは「グルタチオンS転移酵素」のこと。 GSTを作り出すのがGST遺伝子。 GST遺伝子は抗酸化活性などの解毒(デトックス)プロセスを担当している。 GSTは赤身肉が加熱されたときに生じ発ガン性が懸念されるヘテロサイクリック・アミン(HAA)にも作用する。 GST遺伝子がポリモーフィズムの人は、GSTの活性が低かったり完全に失われていたりする

GST遺伝子の関係でGSTの働きが乏しい人は、赤身肉を大量に食べると腸粘膜を襲う毒素(*)の量が容易に増えるために大腸ガンになりやすいのかもしれない。
(*) HAA・多環芳香族炭化水素(PAH)・N-ニトロソアミン・活性酸素種など。

GSTポリモーフィズム者の割合

"Drug Metabolism and Pharmacokinetics"(2012年)によると、日本人の約50%がGSTM1ポリモーフィズム。 欧州も同程度。 アフリカ人とインド人はGSTM1ポリモーフィズムが少なく、シンガポールやマレーシアはGSTM1ポリモーフィズムが多い。

GSTT1も同じく日本人におけるポリモーフィズムの割合は50%近く。 少数派という感じでもない。 アジア人以外はGSTT1ポリモーフィズムの割合が低い(20%とか)。

GSTP1は、この文献の調査対象外。