身体活動と脳の健康(レビュー)

(2019年9月) "Genes" に掲載されたレビュー。

レビューの要旨

  1. 身体活動(PA)はヒトの歴史の大部分において中心的な存在であった。 それゆえヒトの体はPAをするように進化してきた(PAをしないのはヒトにとって不自然な状態である)。
  2. ところが現代では、PA量が減っただけでなく食生活のカロリー密度も増加している(糖類・精白穀物・高脂肪)。 そして、それにより健康に悪影響が生じることが明確になりつつある。
  3. もう1つ明らかになりつつあるのは、食生活などの生活習慣がエピジェネティックな変化(クロマチン構造や遺伝子発現の変化。子供にも引き継がれうる)を引き起こしうることである。
  4. 多数の研究で次の2点が示されている: ①座って過ごす時間が長いことによる弊害の少なくとも一部をPAで緩和できる、②脳の老化やアルツハイマー病・糖尿病・多発性硬化症などの病状の進行を鈍化させる効果がPAに期待できる。
  5. PAは記憶力などの認知機能を改善する効果のほか、鎮痛効果や抗うつ効果、さらには幸福感を引き出す効果すらある。 「健全な体に健全な精神が宿る」というわけだ。
  6. PAはホルモンやニュートロフィン(神経栄養作用を有するタンパク質群)・神経伝達物質の分泌、さらには一部の遺伝子の発現を介して脳の健康に影響すると思われる。