テロメラーゼを標的としてガン細胞を狙い撃ちにする薬

(2015年1月)テキサス大学の研究グループが、ガン腫瘍に存在するテロメラーゼという酵素を利用してガン細胞だけを殺すという薬の研究を進めています。

テロメラーゼ
染色体の末端部にはテロメアと呼ばれる細胞の寿命に関与する部分が存在します。 テロメラーゼというのは、このテロメアの長さを回復する作用を持つ酵素のことです。 ガン細胞はテロメラーゼによってテロメアの長さを回復することで細胞死(アポトーシス)を免れますが、生殖細胞と幹細胞を除く健康な細胞ではテロメラーゼは活性化していません。
テロメラーゼを利用する薬

この「テロメラーゼを利用する薬」というのは 「6-チオ-2'-デオキシグアノシン(6-チオdG)」 という分子です。 6-チオdGは本来はテロメアとは無縁の物質ですが、テロメラーゼに基質として優先的に用いられます。 そして6-チオdGの存在によって、細胞は自分がダメージを受けたのだと勘違いして、(アポトーシスを発動させて)細胞分裂を停止し死滅してしまいます。

「テロメラーゼを用いて毒物をテロメアに組み込むというアプローチは、今のところ非常に有望です」
つまり、6-チオdGという毒物とテロメラーゼとの相性の良さに着目した研究グループが、その相性の良さを利用してテロメラーゼが存在する細胞(主にガン細胞)にのみ6-チオdGを送り込むという手法を考案したということなのでしょう。
研究の概要

この研究では、生体外実験(培養細胞を用いた実験)とマウス実験で、6-チオdGによってガン細胞の増殖が抑制されることを確認しました。

研究者は次のように述べています:
「6-チオdGは、(生体外実験において)僅かな量で様々なガン細胞株に対して幅広い効力が認められただけでなく、マウス実験でも腫瘍量の減少が確認されました」

テロメラーゼはこれまでにもガン治療のターゲットとして熱心に研究されてきており、テロメラーゼの作用を遮断する薬も複数開発されていますが、これらの薬はいずれもガン細胞を死滅させたり腫瘍を縮小させるまでに長期間の投与が必要で、副作用も相当なものがあります。 それらのテロメラーゼ阻害薬と違って6-チオdGは、マウスにを投与しても血液・肝臓・腎臓に副作用が生じませんでした。

ソース記事で明言されていないので推測になりますが、従来のテロメラーゼ阻害薬は、テロメラーゼの効果を阻害することによってガン細胞のテロメアが普通の細胞のテロメアと同じように短くなっていくようにしてアポトーシスを導くという仕組みで、それゆえに薬の投与を開始してからテロメアが自然と短くなるまで長期間にわたり薬を投与し続ける必要があるのでしょう。 それに対して6-チオdGは、ガン細胞のテロメアの残りの長さに関わらず直ちにガン細胞をアポトーシスに導き始めるので投与期間が短くて済むということなのでしょう。

テロメラーゼはヒトのほぼ全種類のガンに発現するため、6-チオdGを用いたアプローチは様々なガンに効果を発揮することが期待されます。

この研究は "Cancer Discovery" 誌に掲載されました。