腹部の脂肪が記憶力から資源を奪う

(2013年10月) 腹部に余分な脂肪が付いている人は、そうでない人に比べて、年を取ってから記憶障害や認知症になるリスクが3倍に増加しますが、"Cell Reports" 誌に掲載された米国の研究によると、その原因が脂肪は脳と体内の物質を奪い合っているためかもしれません。

PPARalpha

この「体内の物質」とは、PPARalpha というタンパク質のことです。 PPARalpha は、脳の器官である海馬(長期記憶の形成に関与している)が記憶を処理する際に必要とするほか、肝臓が腹部の脂肪を燃やすのにも用いられます。

腹部に大量の脂肪がある場合、肝臓による脂肪の代謝で PPARalpha が消費し尽くされてしまいます。 肝臓は、付近に存在する PPARalpha を使い果たしてしまうと、体内の他の部分(脳も含む)に存在する PPARalpha にまで手を出します。 これによって海馬に存在する PPARalpha が枯渇するために記憶や学習が妨げられるのです。

今回の発見

今回の研究で新しく明らかになったのは、海馬が学習と記憶を行う際に PPARalpha を用いているという点です。(肝臓が腹部の脂肪の燃焼に PPARalpha を用いるというのは以前から知られていたのでしょう) この新発見から、腹部の脂肪と認知症や記憶障害との関係が推測されるわけです。

研究の内容

この研究で、PPARalpha が欠乏しているマウスたちを用いた実験を行ったところ、PPARalpha が欠乏したマウスに2つのパターンが見られました。 1つは、肝臓に存在する PPARalpha の量は通常だけれども脳の PPARalpha が枯渇して記憶力と学習能力が衰えるというもの、そして、もう1つは、脳には通常量の PPARalpha が存在するが肝臓で不足する(こちらのパターンでは記憶力は衰えない)というものでした。

そして、PPARalpha が欠乏しているマウスの海馬に PPARalpha を注射すると、学習能力と記憶力が改善しました。