閲覧以外で当サイトのコンテンツを利用する場合には必ず引用・転載・ネタ探しをするときのルールに目を通してください。

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは

ADHDとは

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは慢性的な発達障害あるいは行動障害のことで、その主な症状は次のようなものです:

  1. 注意力を持続できない
  2. 多動(落ち着かない、せわしない、過度に活発)
  3. 衝動的な行動

ADHDの種類

ADHDは次の3種類に区分することが出来ます:
  • 注意欠陥を主とするADHD
    DSMの「注意欠陥」のカテゴリーだけで6つ以上の項目に該当する場合には、このタイプのADHDに区分されます。 注意欠陥を主とするADHDの子供は、大人しく座ったり、周りの子供たちと同じようにやっているように見えますが、実際には注意力が欠如しています。
  • 多動・衝動性を主とするADHD
    DSMの「多動・衝動性」のカテゴリーだけで6つ以上の項目に該当する場合には、このタイプのADHDに区分されます。 このタイプのADHDは、感情やしつけに問題があるのだと勘違いされることがあります。
  • 混合型のADHD

    DSMの両方のカテゴリーにおいて、それぞれ6つずつ以上の項目に該当する場合、このタイプのADHDに区分されます。

    "Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging"(2017年)に発表された研究によると、混合型のADHDは脳領域のどの部分に異常が生じているかによりさらに3つのサブタイプ(下位分類)に分類されます。 3つのサブタイプは次の通り: ①衝動の抑制が困難なサブタイプ、②報酬系に問題が生じているサブタイプ(行動が直ちに報われないと我慢できない)、③衝動の抑制に関しても報酬系に関してもさほどの問題が生じていないサブタイプ。
ADD
ADHD(Attention-deficit/hyperactivity disorder)は以前は、ADD(attention-deficit disorder)と呼ばれていました。 しかし現在では、「注意欠陥(attention-deficit)」と「多動(hyperactivity)」という2つの大きな要素が盛り込まれている「ADHD」という呼称の方が好んで用いられています。

ADHDのタイプと性別

ADHDは女の子よりも男の子に多く(女子の3倍程度)、症状も男女で異なる傾向にあります。 男の子の場合は多動が見られるケースが多いのですが、女の子の場合は大人しいけれども実は注意力が無いというケースが多く見られます。

このような男女の違いは脳に生じる異変の違いに根差していると思われます。 2015年に "Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry" に掲載された研究で8~12才の子供120人の脳をMRIで調べたところ、普通の子供とADHDの子供とで脳に違いが見られたのですが、男のADHD児ではこの違いが一次運動野と呼ばれ基本的な運動機能を司る領域に生じていたのに対して、女のADHD児では前頭前野と呼ばれ動機付けや感情制御能力を司る領域に生じていました。

ADHDの原因

ADHDの原因としては、遺伝的な要因・環境的な要因・発達上の問題(中枢神経系や脳の発達の遅れ)などが疑われていますが、はっきりとはわかっていません。 ADHDのリスク要因は次のようなものです:
  • ADHDの家族歴(近親者にADHDその他の精神疾患の人がいる)
  • 鉛(水道管に使われていたりする)や殺虫剤などの有害物質
  • 妊娠中における飲酒・喫煙・薬物(頭痛薬や抗うつ剤など)の使用
  • 妊娠中における有害物質(PCB・殺虫剤・大気汚染物質など)との接触
  • 早産
  • 生まれる季節(5~11月生まれだとADHDのリスクが増加)、日照量不足

ADHDの治療

ADHDの治療には薬物や行動療法が用いられます。 ADHDの治療でADHDを根本的に治すことは出来ませんが、症状の緩和には有効です。 ADHDは診断と治療開始が早いほど良い結果になります。

生活習慣の改善

運動

複数の研究で、ADHDの症状を緩和するのにジョギングやウォーキングなどの有酸素運動が有効であることが示されています。 子供の場合には朝の登校前に運動をさせると効果的です。

食生活

添加物やカフェインを避けるようにします。 ビタミンやミネラルなどのサプリメント(ADHD専用のものも含めて)はADHDの症状軽減には効果が期待できないでしょう。 ただし、不足している栄養素を補うのであれば効果が期待できます。 ADHDの改善にはワーキングメモリーを鍛えるのが有効だと言われていますが、オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)に、そのワーキングメモリーを改善する効果が期待できます。 多動の原因として砂糖が疑われることが多いのですが、砂糖とADHDの関係を示す明確なデータは存在しません。 砂糖を避けるようにしてもADHDは改善されないと思われます。

ADHDの診断基準

DSMの診断基準

ADHDの診断は、アメリカ精神医学会が作成した "Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)" の基準に基づき行われます。 以下の2つのカテゴリーの兆候や症状に合計で6つ以上該当する場合には、ADHDであると判断されます。

注意欠陥

  • 仕事や勉強において細部にまで注意を払うことが出来ない。 うっかりミスが多い。
  • 物事に対する注意を持続するのが困難。
  • 面と向かって話しかけられているのに、ろくに話を聞いていないことが多い。
  • 仕事や学業において複数の指示を最後までやり遂げられないことが多い。
  • 仕事などの作業を整然と行うのが困難。
  • 持続力を要求される知的作業を嫌がる。
  • 忘れ物をすることが多い。
  • すぐに他のことに気を取られる。
  • 何かをするうえで必要となる事柄を忘れることが多い。

多動・衝動性

  • 座っているときに、そわそわと落ち着かなかったり、手や足をもじもじさせることが多い。
  • 職場や学校で自分の席に座っているべきときに部屋から出て行ってしまうことが多い。
  • 不適切な場面で活発に動き回る(子供の場合には、走り回る、あるいはよじ登るなどの行動)ことが多い。
  • 子供であれば大人しく遊ぶ、あるいは大人であれば静かに余暇を楽しむのが困難。
  • 過度に活発であることが多い。
  • 非常に口数が多いことが多い。
  • 質問が終わってもいないうちに回答を口走ることが多い。
  • 順番待ちが苦手。
  • 他人の会話(子供であれば遊び)に割って入ることが多い。

その他の診断基準

ADHDの診断においては、上記の兆候や症状のうち6つ以上に該当するだけでなく、以下の条件を満たしているかどうかもチェックします:
  • 注意欠陥または多動・衝動性の兆候や症状が障害の原因となっている、あるいは(大人を診断する場合には)子供のときに障害の原因となっていた。
  • ADHDではない同年齢の子供には見られない行動をしている、あるいは(大人を診断する場合には)子供の頃にそういう行動をしていた。
  • 上記の2つのカテゴリに該当する項目がある場合、それらの項目に半年以上にわたって該当している。 (例えば、「過度に活発」という状態になって4ヶ月間しか経っていない場合は、ADHDではない可能性がある)
  • 上記の2つのカテゴリに該当する症状がある場合、それらの症状が複数の場面において見られる。 さらに、その症状が原因で、学校の成績や仕事に支障が出たり、家庭生活や人間関係などに悪影響が生じている。

成人ではADHDの兆候や症状が子供ほど顕著でないため、成人のADHDは、子供のADHDよりも診断が難しくなる傾向にあります。 そのため成人のADHD診断では、上記のDSMだけでなく複数のテストを行うのが普通です。

通常の振る舞いとADHDとの境目

子供の場合

注意力散漫、過剰な活発性、衝動性などは、どんな子供にも見られます。 就学前の子供がすぐに気が散るとか、1つの作業を長時間続けられないというのは普通のことなのです。 小学校に入ってから、あるいは小学校高学年や中学生であっても(大人でも)、興味の無いことであればすぐに気が散るのは当然のことです。

多動についても同じことが言えます。 小さい子供は元気なので、親が疲れてしまっても果てしなく動き続けるのが普通です。ADHDでなくても、他の子供よりも活発な子供もいます。

兄弟や友人と振る舞いが違うというだけで、直ちにADHDだと診断されるわけではありません。 学校での振舞いに問題があっても、家庭や友人関係において問題が無い場合にはADHDではない可能性が高くなります。 同様に、家庭で注意力欠如や多動が見られる場合でも、学校の成績や友人関係に問題が生じていないのであればADHDではないと思われます。

ADHDの兆候は幼稚園や幼児の頃から現れることがありますが、子供が幼いうちにADHDの診断をするのは困難です。 言語能力の遅れなどの発達上の問題がADHDの症状と区別しにくいためです。 したがって、小さな子供でADHDが疑われる場合には、専門家(心理士・精神科医・医療言語聴覚士・発達専門の小児科医など)による診断が必要となります。
関連記事

成人の場合

大人になってからADHDになることは十中八九ありません。 大人になってからADHDの疑いが生じた場合、それはADHDはないか、あるいは子供の頃からADHDだったのに最近気づいたのでしょう。

ADHDと診断されるのは、ADHDの特徴的な症状が重症で生活の複数の面において現在進行形で問題が生じている場合だけですが、成人のADHD診断は次のような理由で(子供の場合よりも)困難です:

  • ADHDの症状の一部が不安感や気分障害などによる症状に似ている。
  • ADHDのある成人は、鬱や不安感などの精神疾患も少なくとも1つはあることが多い。

注意欠陥・多動・衝動的な行動が一時的でない場合には医師に相談しましょう。ADHDの兆候は他の精神疾患に類似しているので、注意欠陥や多動があってもADHDではない可能性があります。

ADHDと年齢

ADHDの症状は幼少の頃(早い場合は2~3才頃)から表れるのが普通で、以前はADHDは子供に特有の疾患であると考えられていました。 ADHDが成長につれて緩和されてゆくケースも確かに存在しますが、大人になっても完全には治らないことも少なくありません。 大人になってADHDが治ったように見えても実は治っていないというケースもあります。 成人後にもADHDが残る率は10~50%だと推算されています。 そのような場合には、ADHDの症状と上手く付き合っていく必要があります。

自分がADHDであることに気付かないまま大人になった人は、理由も分からずに日々の生活が大変であると感じています。 ADHDである大人は皆、子供のときにADHDと診断されていなくても子供の頃からADHDです。 成長につれてADHDの症状が減ることはありますが、大人になってから新たにADHDになることはありません。

ADHDと間違われがちな疾患

何らかの疾患(あるいはその治療)が、①ADHDと思われる兆候や症状の原因であったり、②ADHDと同時に発生していることがあります。 以下はその例です:
  • 学習や言語に関する問題
  • 気分障害(鬱など)
  • 不安障害
  • 発作性疾患(てんかん等)
  • 視覚や聴覚の異常
  • トゥーレット症候群(運動性および言語性のチックや自傷行動を伴う小児疾患)
  • 睡眠障害
  • 甲状腺に作用する薬
  • 物質乱用(薬物の違法な使用)
  • 脳の傷害
  • 鉛中毒
  • (成人の場合に)飲酒
  • (成人の場合に)低血糖

ADHDで生じる問題

子供の場合

ADHDの子供には次のような問題が生じます:
  • 学校の成績が悪くなる。
  • そのために、周囲の大人や同級生からの評価が下がる。
  • 自己評価(自尊心)も下がる。
  • 事故に遭ったり怪我をすることが多い。
  • 同級生や周囲の大人に受け入れられたり、交流したりする上でトラブルが生じやすい(他人の怒っている表情を認識できなかったりする)。
  • 飲酒や麻薬などの非行に走るリスクが増加する。
  • 肥満のリスクが増加する

成人の場合

成人の場合には次のような問題が生じます:
  • 事件(法律違反)を起こすリスクが増加する。
  • 仕事に支障が出がち。
  • 麻薬の使用や、過度の飲酒をすることが多い。
  • 自動車事故などの事故を起こしやすい。
  • 人間関係が安定しにくい。
  • 経済的に困ることが多い。
  • 心身の健康が損なわれやすい。