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アスピリンとは

アスピリンとは

アスピリンとはどういう薬なのでしょうか? 映画や小説や歌の歌詞に登場するので名前だけは知られていますが、具体的にはどういう薬なのでしょうか? 日本でも売られているんでしょうか?

アスピリンの効果は解熱・鎮痛・抗炎症で、これらの効果のために頭痛・風邪・関節炎・筋肉痛・生理痛などの薬として昔から用いられてきました。

「アスピリン」はもともと、ドイツのバイエル社という製薬会社のアセチルサリチル酸製剤の名前だったのですが、今では一般名詞として使われています。

アスピリンの有効成分はアセチルサリチル酸

アスピリンの有効成分はアセチルサリチル酸です。 したがって、アセチルサリチル酸が使われている薬がアスピリンだということになります。

アスピリンの起源

アセチルサリチル酸は19世紀にバイエル社によって初めて合成された人工の物質ですが、その着想の元になったのはヤナギの樹皮に含まれるサリシンという天然の物質です。

ヤナギの樹皮はギリシャ時代から解熱剤として用いられており、19世紀になってヤナギ樹皮の有効成分がサリシンであることが明らかになりました。 このサリシンを参考にして副作用の少ないアセチルサリチル酸を開発したのがバイエル社だというわけです。

日本でアセチルサリチル酸が使われている解熱鎮痛剤は、バファリン(種類によっては有効成分がアセチルサリチル酸でないものもある)、ケロリン、バイエルアスピリンなどです。 他に、エキセドリンという薬にもアセチルサリチル酸が使われていますが、これにはアセトアミノフェンも含有されているので純粋なアスピリンとは言えません。

アスピリンはNSAIDの一種

アスピリンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と呼ばれる薬の種類に属します。 アスピリン以外の NSAID ではイブプロフェンが(喉に効くことで)有名でしょうか。 「NSAID」というくくりで研究された研究が多数存在します。

アセトアミノフェンは抗炎症作用がほとんど無いために、NSAID には分類されません。

アスピリンには解熱・鎮痛以外の効果も

頭痛や熱などの無いときにもアスピリンを低用量で継続的に常用することで、様々な病気を予防できることが複数の研究により示されています。 アスピリンの通常の一回分が325mgであるのに対して、低用量のアスピリンは一回分が80mgです。
  • 心臓発作、脳卒中

    ハーバード大学の研究グループによると、冠状動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の患者や、健康な人でも50歳以上の男性であれば、アスピリンを常用することで心臓発作のリスクを低減できます。 また米国の政府機関によると、男性ではアスピリンによって一度目の心臓発作のリスクが32%下がります。

    脳卒中に関しても、米国の National Heart Foundation によるとアスピリンを服用している人ではリスクが25%減少します。 アスピリンによって血液が希釈されるために、心臓発作や脳卒中が起こりにくくなるのだと考えられています。

    その一方で、アスピリンを含むNSAIDを大量に服用している人では心臓発作と脳卒中のリスクが増加するという結果になった研究もあります。

    遺伝的体質によってはアスピリン常用による心血管疾患予防の効果が無いばかりか逆効果に」という研究では、23%の女性では低用量アスピリンの常用が心臓病や脳卒中に有効でないという結果になっています。 この23%の女性は遺伝子的にそもそも心臓病や脳卒中になりにくい体質なのですが、その体質がアスピリンの常用によって消滅するために、アスピリンが有益でないばかりか僅かに有害となります。
  • 血栓
    アスピリンを低用量(100mg)で常用することによって、動脈や静脈の血栓の再発リスクが1/3になるという結果になった研究があります。
  • ガン

    アスピリンの常用には、乳ガン・卵巣ガン・大腸ガン・前立腺ガン・皮膚ガン・肺ガン・膵臓ガンなどの予防効果もあると考えられます。 最近行われた米国ガン協会の調査でも、アスピリンによってガン全体の死亡率が37%減少するという結果が出ています。

    細胞実験でも、アスピリンにガン細胞の分裂を鈍化させたりガン細胞の死滅を促進したりする効果のあることが示されています。
  • 認知症
    米国で3,000人分のデータに基づいて行われた研究によると、アスピリンまたはイブプロフェンを週に4回以上服用している人では、アルツハイマー病を含む認知症の発症リスクが45%減少していました。 アスピリンの抗炎症作用、あるいはアスピリンがアミロイドのプラーク(アルツハイマー病患者の脳に見られるある種のタンパク質の蓄積)形成を阻害する作用によって、認知症の発症が抑えられるのだと考えられています。

アスピリンの副作用

様々な効能があり、古くから使われているアスピリンですが、そんなアスピリンにも副作用があります。 アスピリンの常用を開始する前には医師に相談する必要がありますが、次のような人は特にアスピリンの常用に注意しましょう。
  • 血液希釈剤を服用している人

    クマジン(ワルファリン)やプラビックス(クロピドグレル)、あるいはエフィエント(プラスグレル)、プラダクサ(ダビガトラン)、イグザレルト(リバロキサバン)、エリキス(アピキサバン)などの血栓予防薬(血液を希釈する作用がある)を服用中である場合には、アスピリンの同時服用によって血液が希釈され過ぎて、危険な出血が生じるリスクがあります。

    ワシントン大学医学部の Bruce Davidson 博士は次のように述べています:

    「血液希釈剤を服用している期間中に(アスピリンなどの)NSAID を服用すると、多量出血(major bleed)のリスクが2倍になります。 このような多量出血の1/4は NSAID の服用開始から8日間以内に起こります。 血液希釈剤の服用期間中に NSAID を一度飲んだだけでも出血が起こることがあるのです。

    血液希釈剤を服用している場合、頭痛・筋肉痛・関節痛のときには NSAID ではなく、有効成分としてアセトアミノフェンを含有する薬(タイレノールなど)を飲みましょう」
  • 魚油やビタミンE を飲んでいる人
    アスピリンを魚油やビタミンE と併用すると、特に高齢者で紫斑(内出血)のおそれがあります。 紫斑に気付いたら魚油やビタミンE の服用量を減らしましょう。
  • 加齢黄斑変性のリスクが高い人

    2012年に "Opthalmology" 誌に掲載された研究によると、アスピリンを10年以上にわたって常用していると滲出型の加齢黄斑変性の発症リスクが2倍以上になります。 滲出型の加齢黄斑変性では、新生血管と呼ばれる異常な血管が網膜の下側に形成されます。 新生血管からは、血液などの体液が漏れ出して、これが網膜細胞を傷つけるために視力が徐々に衰え、放置しておくと視力が失われます。

    AMD の家族歴のある人や喫煙者では、AMD のリスクが2倍になります。 これらの人は、アスピリンの常用を避けるのが賢明かもしれません。
  • 胃腸の出血のリスクのある人
    アスピリンの副作用として最も多いのが胃腸からの出血です。 ただし、アスピリンが出血の原因になるというよりは、既に出血が生じている場合に、それがアスピリンによって悪化するのだと考えられています。
  • 慢性的な傷のある人、糖尿病の人
    マウス実験で、アスピリンに傷口の皮膚の修復を遅らせる作用のあることが明らかにされています。
  • ガンの化学療法を受けている人、血液疾患のある人
    このような人の場合、アスピリンの常用は安全でない可能性があります。 常用を開始する前に医師に相談しましょう。

2012年5月には、アスピリンのメーカーであるバイエル社がアスピリンのラベル表記に「心臓発作・脳卒中予防」を効能として追加しようとしたのに対して、米国食品医薬局(FDA)は「心臓発作や脳卒中の病歴の無い人が、これらの病気の予防を目的としてアスピリンを服用すべきではない」として、バイエル社の要求を退けています。

心臓発作や脳卒中の病歴の無い人の場合には、アスピリン常用のメリットよりデメリット(副作用のリスク)の方が大きいと FDA は判断しているのでしょう。

アスピリン服用に関するアドバイス

以下は、世界的にも有名な Palm Beach Cardiovascular Clinic において心臓移植チームの責任者を務める Chauncey Crandall 医学博士によるアスピリン服用に関するアドバイスです:
  • 心臓発作や心臓疾患の病歴があるのなら、低用量(81mg)のアスピリンを毎日服用する。
  • 心臓疾患の病歴がなくても50才を過ぎたら、低用量のアスピリンを週に2~3回服用する。
  • 心臓発作は朝方に起こることが多いので、アスピリンは朝に服用すること。 胃に食べ物が入っている朝食後がよろしい。 (博士のアドバイスに反して2013年には、心臓発作・脳卒中予防でアスピリンを飲むのは寝る前がよいとする研究が発表されています)
  • 低用量のアスピリンの代わりに、通常用量(325mg)のアスピリンを1/4に割って服用しても良い。(成分は同じ)
  • 飛行機や車などで長時間移動する場合には、その前日に通常用量(325mg)のアスピリンを飲んでおく。 こうすることによって深部静脈血栓(いわゆるエコノミークラス症候群。 脚に血栓ができる命にも関わりかねない症状)を防ぐことができる。
  • 心臓発作が起きそうな感じになったら、通常用量のアスピリン2錠を(飲むのではなく)ゆっくりと噛むと良い。 低容量のアスピリンの場合は5錠。 錠剤がコーティングされていないものが良い(*)が、とりあえず手元にあるものを噛む。
    (*) アスピリンのコーティングがアスピリンの効果を妨げます。
  • アスピリンでアレルギーが出る人が稀にいますが、そういう人の場合には納豆キナーゼという酵素がアスピリンの代用になります。この酵素は名前の通り納豆から抽出されます。 ただし、納豆キナーゼを常用するのも、医師に相談してからにしましょう。