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PTSDとは

PTSDというのは Post-Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)の頭文字を取った言葉で、戦争や、テロ、地震、洪水、噴火、暴行など生命に危険が及ぶような恐ろしい出来事に見舞われた後に起こる不安障害のことです。

女性は男性の2倍も PTSDになり易い傾向にあります。 米国の統計では、一生のうちに PTSDになる人の率が女性では10%、男性では4%であると推算されています。

PTSDは年齢に関わらず、子供にも起こります。 米国の学校で発生した銃撃事件のときにも、子供がPTSDになるということがありました。
遺伝子もPTSDのリスク要因
"Journal of Affective Disorders"(2015年2月号)に掲載されたUCLAの研究によると、遺伝子的にPTSDになりやすい人がいます。 このUCLAの研究では、COMTというドーパミンの分解に関与する遺伝子と、TPH-2というセロトニン生産量に関与する遺伝子に変異が生じている人ではPTSD発症リスクが40~60%(PTSDの診断基準により異なる)増加していました。 この2つ以外にもPTSDのリスクに関与している遺伝子があると思われます。
PTSDの症状

PTSDの症状は次のようなものです(原因となった事件により症状は異なります):

  • 不安障害
  • 重度の鬱症状
  • PTSDの原因となった事件を思い起こさせるような物事を避ける
  • PTSDの原因となった事件について話し合うのを嫌がる
  • PTSDの原因となった事件について記憶の欠落している部分がある
  • PTSDの原因となった事件(地震とか)が再び起こる気がする
  • わざわざ恐ろしいことばかり考えてしまう
  • 危険に対する過剰な警戒
  • 恐怖症(閉所恐怖症、暗所恐怖症、先端恐怖症、男性恐怖症などの類)
  • 薬物依存、アルコール依存
  • 社会的な孤立感
  • 人間関係の断絶
  • 感情的、精神的な無感覚、何にも興味を持てない
  • 罪悪感
  • 不機嫌・イライラ、突発的な怒りの感情
  • 集中力の欠如
  • 眠気
  • 不眠症、悪夢
  • 行動パターンへの長期的な影響
  • 頭痛
  • 体の痛み、胸の痛み
  • お腹の調子が悪い
  • 震え、発汗
  • 免疫系の弱体化
  • 闘争/逃走症候群
闘争/逃走症候群とは

闘争/逃走症候群(fight or flight syndrome)とは、ショッキングな出来事に安心感を奪われて、常に身に危険が迫っているとき(例えば、原始時代に獣に襲われて戦うか逃げるかという選択を迫られる状況など)のような体の状態になってしまうことを言います。

「闘争か逃走か?」という状態にあるとき、人体はコルチゾールと、アドレナリン、ノルアドレナリンというホルモンを分泌して、次のような状態になります:

- 心拍数が増加する
- 視界が狭まる(トンネル・ビジョン)
- 筋肉が緊張する
- 汗をかき始める
- 聴覚が敏感になる
PTSDでリスクが増加する病気
ガンのリスクは増加しない

PTSDによりリスクが増加する身体的な疾患としてまず思い浮かぶのはガンですが、複数の研究で、PTSDによってガンのリスクは増加しないことが示されています。 "European Journal of Epidemiology"(2015年5月)に掲載されたボストン大学による大規模な研究でも同様の結果となっています。

糖尿病や心臓病のリスクが増加

American College of Cardiology's 62nd Annual Scientific Session(2013年3月に開催)で発表された研究では、PTSDの患者でインスリン抵抗性やメタボリック・シンドロームが生じるリスクが増加し、その結果、糖尿病や心臓病になりやすくなる可能性が指摘されています。

この研究は20万人以上の米国退役軍人(46~74歳。 93%が男性)を対象としたもので、インスリン抵抗性が増加するリスクが対照群で19%だったのに対して PTSDの人では35%、同様にメタボリック・シンドロームになるリスクも、38%に対して53%でした。

過去の類似研究にも同様の結果になったものが複数存在います。 例えばコロンビア大学の研究でも、PTSDの女性では2型糖尿病のリスクが増加することが示されています。

老化・早死に

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが行い "American Journal of Geriatric Psychiatry"(2015年)に掲載されたレビューでは、PTSD患者は心血管疾患・2型糖尿病・胃腸潰瘍・認知症などの病気になるリスクが高いだけでなく、細胞老化の指標であるテロメアが短く早死にすることも多いという結果になっています。

PTSDには運動が有効

"Acta Psychiatrica Scandinavica" 誌(2014年12月)に掲載されたオーストラリアの研究で、運動が PTSDの治療に有効であるという結果になっています。

この研究では、退役軍人82人(84%が男性。 平均年齢47.8才)を2つのグループに分けて12週間にわたって、一方のグループにはPTSDの通常の治療(心理療法や薬物療法など)を受けてもらい、もう一方のグループには、通常の治療に加えて筋力トレーニング(30分×3回/週)とウォーキングという運動を行ってもらいました。

その結果、通常の治療のみのグループに比べて運動もしたグループの方が、PTSDの症状が5.4%軽減されていました。 運動は、抑鬱の緩和や睡眠の質の改善にも効果がありました。