他人の動作を観るとその動作に関わる脳領域が刺激されてリハビリ効果

(2015年3月) "Neurorehabil Neural Repair" 誌に掲載されたマードック大学(オーストラリア)などの研究によると、脳卒中のために腕に身体障害が生じている患者は、他人が腕を用いた作業をする様を観察(アクション・オブザーベーション)して、それを真似ようとすることによって運動機能が改善する可能性があります。 (出典: Copycat behaviour may assist stroke rehabilitation by Rebecca Graham)

アクション・オブザーベーションとは

他人の行為を観察することをアクション・オブザーベーション(行為の観察)と言いますが、アクション・オブザーベーションでは、行為者が当該の行為において用いるのと同じ脳の領域が観察者(脳卒中患者)の脳においても用いられることによって、観察者の運動系に対するトレーニング効果が生じると思われます。

研究の方法

今回の研究は、脳卒中の発作が起こってから半年以上が経過した患者14人を対象に行われました。 14人の障害の程度はマチマチで、指先だけを思い通りに動かせないという人から、肩を僅かに動かせるだけという人まで様々でした。 ただしどの患者も意思の疎通は行うことが出来ました。

患者たちにはまず、(アクション・オブザーベーションの効果を把握するための比較対象用の期間として)自然の風景を写した映像を見た後に体を動かす練習をするということを2週間にわたって続けてもらいました。

その後再び2週間にわたって、アクション・オブザーベーションの直後(*)に体を動かす練習を行ってもらいました。

(*) 研究者によると、アクション・オブザーベーションの直後に体を動かすというのが今回の重要な点です。 過去にもアクション・オブザーベーションの脳卒中患者への効果を調べた研究が複数行われており、それらの結果はマチマチでしたが、研究者はアクション・オブザーベーションの効果が出なかったのは、アクション・オブザーベーションと体を動かす練習との間の時間が離れすぎていたからだと考えています。

過去の研究ではアクション・オブザーベーションと体を動かす練習とのあいだに2~6分間の時間を空けましたが、今回の研究では30秒間としました。
結果
自然の風景の映像を見た後でもアクション・オブザーベーションの後でも体を動かす練習の効果が見られましたが、アクション・オブザーベーションの後の練習の方が高い効果が得られました。
最初の2週間の後には Upper Extremity Fugl-Meyer Motor Assessment(FMA)のスコアが6.64で、Functional Test of the Hemiparetic Upper Extremity(FTHUE)のレベルが0.43、作業(tasks)が1.00。 これに対してアクション・オブザーベーションの2週間の後には FMA のスコアが10.64で、FTHUEのレベルが0.79、作業が1.57でした。

研究者によると、今回の患者の中には(全部がアクション・オブザーベーションのお陰というわけではありませんが)服のボタンをとめれるようになった人や、(料理で)肉を切っれるようになった人、運転免許を再取得できた人がいました。

ただし、もっと厳密な臨床試験により今回の結果を確認する必要があります。