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心肺能力が優れていると前頭前野皮質の使われ方が年を取らない

(2015年10月) "NeuroImage" 誌に掲載された筑波大学の研究で、心肺能力が優れている人の知的能力が高齢になっても衰えにくいのはそのような高齢者が若い頃と同じように脳を使っているからであることが明らかになりました。

脳の使われ方に加齢がもたらす変化
年を取るにつれて若い頃とは脳の使い方が変わってきます。 例えば知的作業(短期記憶・言葉の理解・以前に経験した物事の認識など)を行うときの傾向として、若い頃には前頭前野皮質(*)の左側が主に使用されますが、年を取ると前頭前野皮質の右側と左側の両方が使用されるようになります。
(*) 前頭前野皮質は実行機能・記憶・知能・言語・視覚に関与する脳の領域で、額の真後ろに位置しています。(実行機能とは計画立案能力や、判断力、思考力、問題解決能力、注意力、感情抑制力などのことです)
HAROLDと名付けられたこの現象は、加齢によって脳が構造的および生理学的に劣化するために脳の能力と効率性が衰えるのを補おうとして生じます。
(*) "hemispheric asymmetry reduction in older adults(加齢による大脳半球の非対称性の減少)"の略語。
研究の方法
心肺能力がさまざまに異なる64~75才の中高齢者60人を被験者として、運動テストを行って心肺能力を測定した後に実行機能などの認知機能のテスト(*) を受けてもらいました。
(*) 色を意味する言葉に付いた色を答えてもらうというテスト。 例えば、青色で「赤」と書かれた文字の色を答えてもらう(答えは「赤」ではなく「青」)。 速く答えられるほど認知機能が優れている。 アルツハイマー病の早期発見テストでも似たようなテストが行われます。

そして被験者が認知機能のテストをしている最中に、fNIRS(functional near infrared spectroscopy)という機器を用いて前頭前野皮質の活性を調べました。 fNIRSを用いることで、脳の血中酸素濃度から脳の活性を推定することができます。

結果

研究チームが予想した通り、中高齢者の被験者では認知機能テストの最中に前頭前野皮質の右側と左側の両方が同じように活性化していました。

しかしテストの成績(回答の速さ)と脳が活性化する領域との関係を分析したところ、若者と同じように前頭前野皮質の左側を多く使っていた人の方がテスト成績が良好でした。 さらに心肺能力と認知機能テストの結果を分析したところ、心肺能力が優れている人のほうが成績が良好でした。

実用性
「年を取ってから心肺機能を向上させるための運動を始めても認知機能の維持に効果があるのか?」あるいは「今回の結果が女性にも当てはまるのか?」といった疑問点は残っていますが、研究者は「効果があるかもしれないのでウォーキングの習慣を始めると良いでしょう」と述べています。