年を取ると運動をしたときの抗酸化反応が生じにくい

(2016年6月) "Free Radical Biology and Medicine" 誌に掲載されたノース・アリゾナ大学の研究によると、同じ30分間の運動であっても若者と中高年者では肉体への効果に差があります。 運動に反応する細胞の能力が加齢に伴って低下するためです。出典: Beneficial Effects of Exercise Change with Age

研究の方法

18~30才の若い男性のグループと55才以上の中高年の男性のグループに、サイクリング・マシンで30分間の運動を行ってもらい、6つの時点で血液を採取して細胞の機能と抗酸化反応を調べました。

運動の激しさは年齢と各人の体力(最大有酸素能)に応じて加減しました。 また、いずれのグループでも全員が次に該当していました:
  • 概ね健康である。
  • 非喫煙者である。
  • マルチビタミン以上に抗酸化能力があるサプリメントを服用していない。
  • 試験前の2週間のあいだ非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(*)を服用していない。
    (*) 風邪薬などの解熱鎮痛剤としても用いられています。 バファリンなどのアスピリンや、喉に効くことで有名なイブプロフェン、何かに配合されていることで有名なインドメタシンもNSAIDです。
結果

若者でも中高年者でも、限界未満の激しさの有酸素運動を1回行うだけでも、個々の細胞全体のレベルで人体に備わる抗酸化能力に深く関与する遺伝子群が十分に活性化されていました。

ところが中高年者では、Nrf2と呼ばれ抗酸化遺伝子群の調整役として機能する遺伝子の細胞核輸入(nuclear import)が損なわれていました。 細胞核輸入はNrf2が抗酸化遺伝子の作用対象に接触するうえで必要とされます。 中高年者は運動をしてもNrf2遺伝子が活性化しにくいということになります。

コメント
研究者は次のように述べています:
「今回の研究では、年を取ると運動をしたときの抗酸化反応が生じにくいことが明らかになりました。 運動はあらゆる年代の人にとって有益ですし大切ですが、少なくとも中程度の激しさの運動を1回だけ行う場合で比較すると、年を取ると運動をしても若い頃ほどには細胞の有益な反応を得られないという結果でした」
今後
研究者は現在、加齢による細胞の変化を引き起こす分子的なプロセスを特定しようと研究を続けています。 運動が引き起こす有益な作用を促進する分子的シグナルの解明が進めば、酸化ストレスに対する人体の反応を改善して様々な慢性疾患のリスクを低下させる上で有益となるアドバイスも可能となると思われます。
付記
「抗酸化能反応が衰えると、どういう不都合があるのか?」という疑問に関する説明が本文中にありませんでしたが、最後のパラグラフに「慢性疾患のリスクを低下」とあることから察するに、年を取って抗酸化反応が低下する(運動により作られる抗酸化物質の量が減るということでしょうか?)ことの問題点は、運動中に生じる酸化ストレスに対処できなくなるというのではなくて、運動によって得られる健康効果が減るということなのでしょう。