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大気汚染で癲癇のリスクが増加。 オゾンはリスクが下がる可能性も

(2016年8月) "Plos One" に掲載された中国の研究によると、短期的な大気汚染が癲癇の症状に関係している可能性があります。 大気中の二酸化窒素(NO2)または二酸化硫黄(SO2)の濃度が高い日には癲癇のために来院(*)する患者が多かったのです。出典: The Novel Relationship between Urban Air Pollution and Epilepsy: A Time Series Study
(*) 来院の理由は不明ですが、発作(attack)という言葉が論文に何度か登場するので、発作による来院を念頭に置いているのでしょう。

その一方で、オゾン(O3)の濃度が高かった日には癲癇で来院する患者がわずかに少なかったことから、オゾンに癲癇の(発作の)リスクを減らす効果があるかもしれません。

研究の方法

大気汚染で有名な中国の西安市に所在する病院の2年分の診療記録を調査して、大気汚染と癲癇の関係を調べました。 データに含まれる来院回数は約2万件(このうち男性は1万2千件ほど)でした。

結果
データ全体で分析したところ、NO2・SO2・O3の濃度が10μg/m3増えるごとに、大気汚染がひどかった当日に癲癇を理由として来院する患者の数が、それぞれ3.17%3.55%、および-0.84%(*)増えていました。 大気汚染がひどかった翌日にも、癲癇による来院が増えていました。
(*) 「-0.84%増えた」なので「来院者数が0.84%減っていた」ということ。 ただし、男女総合では95%CIの数値が-1.58%~0.09%とゼロをまたいでいるので、この分析の時点での統計学的な有意性は微妙です。 男性に限ると減少率は-0.89%で、統計学的な有意性も存在しました。
60才以上では大気汚染の影響なし

年齢別に分析すると、59才超のグループでは大気中のNO2とSO2の濃度の高さと来院者数との関係の統計学的な有意性が失われていました(60才以上の人に限ると、NO2やSO2の濃度の癲癇のリスクへの影響は見られなかった)。

PM2.5を考慮した分析

大気汚染物質の一種であるPM2.5の濃度も考慮して分析すると、NO2やSO2の濃度と来院者数との関係が強まり、来院者数の増加率が(3.17%→)4.79%と(3.55%→)4.19%に増えました。

NO2とO3の関係

大気中のNO2濃度の影響を考慮しつつ、癲癇による来院者数とO3の関係を分析すると、O3濃度が高い日の来院者数減少幅が男女総合で(単独の分析で-0.84%だったのが)-1.14%へと拡大しました。 さらに、男女総合では単独の分析で統計学的に問題だった95%CIも有意なもの(-1.90%~-0.39%)となりました。

類似研究

チリで行われ2012年に "Environment International" 誌に掲載された研究(リンク先は英文)では、SO2とNO2のほか一酸化炭素(CO)・PM2.5・PM10、さらにO3の大気中濃度が高い場合にも、年齢・性別・季節に関わらず癲癇で入院する事態となるリスクが増加するという結果になっています。

O3に関してチリの研究と今回の研究とで結果が異なる点について研究チームは、「中国とチリで人種・気候・大気汚染の程度・医療水準が異なるためではないか」と述べています。

解説
NO2

モルモットの実験で、呼吸により体内に取り込まれたNO2が、血液中の中性脂肪などの成分を介して中央神経系の神経機能を損なうことが示されています。

SO2
ネズミの実験で以下が示されています:
  • SO2が海馬に対して毒性を発揮する。
  • SO2の派生物が海馬のシナプスに損傷を引き起こす可能性がある。
  • 環境基準値を超える濃度のSO2を慢性的に吸い込んでいると、神経炎症による神経毒性が生じる。
O3
研究チームによると、O3の濃度が高いと神経系にダメージが生じる可能性がありますが、濃度が低いと逆に神経系を保護する効果があるかもしれません。 2015年の研究(リンク先は英文)では、ネズミを用いた実験でO3の癲癇治療への有効性が示されています。