大気汚染で老化の指標「テロメア」が短くなるどころか長くなる

(2016年10月) "Environment International" 誌に掲載されたロンドン大学クイーン・メアリーの研究で、大気汚染がひどい地域に住む子供のほうが老化の指標であるテロメアが長いという結果になりました。

研究の方法

ロンドン市内の23の学校に通う8~9才の児童333人のテロメアの長さを調べました。 そして、テロメアの長さを窒素酸化物・粒子状物質(PM)・タバコの煙にさらされた程度と照らし合わせました。

窒素酸化物とPMにどれだけさらされたかは、大気汚染物質の濃度を調べたデータに基づいて推測しました。 タバコの煙にどれだけさらされたかは、尿中に含まれるニコチン代謝物の濃度から推測しました。

結果

1年間のうちに窒素酸化物やPM(PM2.5とPM10)といった大気汚染物質にさらされる量が多かった児童はテロメアが長いという結果でした。 タバコの煙にさらされる量と児童のテロメアの長さとのあいだには関係が見られませんでした。

解説

大気汚染は短期的であっても長期的であっても、心臓病・脳卒中・呼吸器疾患のリスクが増加します。 大気汚染は炎症と酸化ストレスを引き起こすことによって、健康に悪影響を及ぼすと考えられていますが、慢性的な炎症と酸化ストレスはテロメアが短くなる原因でもあります。

したがって「大気汚染でテロメアが長くなる」という今回の結果は意外なものに思えますが、テロメアと大気汚染の関係について調べたこれまでの研究では、「大気汚染がひどい地域に住む人はテロメアが短い」という結果になったものと「大気汚染がひどい地域に住む人はテロメアが長い」という結果になったものが混在しています。

急性的な炎症が生じた際に一時的にテロメアが長くなることから、「長期的な大気汚染(粒子状物質)ではテロメアが短くなるけれども、数日間という短期間だけひどい大気汚染にさらされる場合にはテロメアが長くなるのではないか」とも考えられていますが、今回の研究では1年間という長期的な期間でも大気汚染がひどいとテロメアが長いという結果でした。