飛行機の騒音も心臓疾患と脳卒中の原因に

(2013年10月) "*The BMJ*" に航空機の騒音によって心血管疾患(心臓発作など)のリスクが増加することを示す研究が2つ掲載されています。 航空機騒音と高血圧のリスクとの関係については、これまでに複数の研究が行われていますが、心血管疾患との関係に関する研究は数が少なく結果も一致していません。

英国の研究
研究の方法

世界で最も賑わっている空港の1つである英国のヒースロー空港付近の住民360万人のデータを用いて、ヒースロー空港近辺の21の地区における心血管疾患(脳卒中と心臓疾患)による入院件数および死亡率を航空機騒音のデータと照らし合わせました。

結果

航空機騒音によって心血管疾患による入院件数も死亡率も増加していました。

騒音レベルが最高の地域では最低の地域に比べて、心血管疾患による入院および死亡のリスクが10~20%も増加していたのです。 入院・死亡リスクの増加は、昼間と夜間の航空機騒音が最も高レベルである2%の住民で特に顕著でした。
上記の詳細:
  • 航空機騒音のデータはイギリス民間航空局から取得しました。
  • 研究対象の全域を 12,110のエリア(1つのエリアの人口は300人ほど)に分割し、各エリアの 2001~2005年にかけての騒音レベルを調べました。
  • 21の地区とは、航空機騒音のレベルが50デシベルを越えるロンドンの特別地区12と、ロンドンの西にある9の地区です。 50デシベルというのは、静かな部屋で行われる通常の会話と同程度の音量です。

この結果は、年齢・性別・人種・社会とのつながり・喫煙習慣・大気汚染・(道路の)交通騒音などの要因を考慮したうえでのものです。

留意点

この研究では夜間騒音と昼間騒音との区別がつけられなかったため、夜間騒音によって睡眠が妨げられるために心血管疾患による入院・死亡のリスクが増加していたのか否かは不明です。

また、研究者によると、今回見られた心血管疾患による入院・死亡のリスクの増加の原因が、航空機騒音以外の要因によるものである可能性もあります。

米国の研究
研究の方法

ハーバード大学とボストン大学の合同チームが、米国内の89の空港の近くに住む65歳以上の高齢者600万人のデータを用いて、航空騒音と心血管疾患による入院のリスクとの関係を調べました。 複数の空港が関与する大規模なデータを用いての研究は、この研究が初めてです。

結果

航空騒音が10デシベル増加すると、心血管疾患による入院のリスクが3.5%増加していました。 この結果は、データに含まれる人の学歴・収入や、大気汚染、道路までの距離など心血管疾患のリスクに影響する要因を考慮した上でのものです。

こちらの研究でも、航空騒音による心血管疾患での入院リスクの増加は、騒音レベルが最高水準(55デシベル)にあるグループで最も強く見られました。 空港近辺に住む高齢者の場合には、心血管疾患による入院の2.3%で航空機騒音が原因となっているという計算になります。

解説

研究グループは、今回の研究にも一定の欠陥はあるけれども、空港騒音と心血管疾患の間に(特に騒音がひどい地域において)統計学的に有意な関係があるというエビデンスを提示できたと考えています。

英国の専門家は次のように述べています:
「これら2つのの研究は、航空騒音が、単なる迷惑や睡眠障害、生活の質の低下の原因になるだけではなく、心血管疾患になるリスクと心血管疾患で死ぬリスクに悪影響を与えるという予備的なエビデンスとなります」