(2018年1月) "Nature" 誌に掲載された英国立MRC分子生物学研究所の研究で、アルコールが幹細胞のDNAにダメージを及ぼしガンのリスクを増加させるメカニズムが明らかにされています。(出典: New research shows how alcohol damages DNA and increases cancer risk)
アルコールによるDNAダメージ
アルコール(エタノール)を投与されたマウスのDNAを検査して、アルコールがマウスの遺伝子にどのようなダメージを与えるかを調べたところ...
アルコールが体内で処理されるときに生じるアセトアルデヒドという有害な物質が血液幹細胞の内部においてDNAを破壊し、それによって染色体の再配列が生じてDNAの塩基配列が恒久的に変化していました。
研究者は次のように述べています:
「一部のガンは幹細胞のDNAが傷つくことで生じます。 DNAは何らかの偶然で傷つくこともありますが、今回の研究によるとアルコールによりDNAが傷つくリスクが増加する恐れがあります」
対アルコール用酵素の有無
ALDHと呼ばれる酵素の1種であるALDH2を体内で作る能力を持たないマウスはALDH2を備えるマウスに比べて、アルコール投与がDNAに及ぼすダメージが4倍でした。ALDH酵素とは
体内に入ったアルコールを安全に無害化するのに必要とされる酵素にALDHと呼ばれるものがあります。 この酵素はアルコールから生じる悪魔アセトアルデヒドを酢酸へと分解してくれます(酢酸は体内でエネルギーとして利用される)。
遺伝子的な体質によっては、このALDH酵素を備えていなかったり備えていても酵素の性能が悪かったりします。 こういう人がお酒を飲むと、アセトアルデヒドが体内に蓄積して具合が悪くなります。 お酒を飲んで顔が赤くなる人もALDH酵素に不備があると考えてよいでしょう。解説
今回の研究ではアルコールを体内で上手く処理できないと飲酒によってDNAが傷つくリスクひいてはガンになるリスクが増加することが示されましたが、アルコールを処理するシステムが問題なく機能している人であっても飲酒によりガンのリスクが増加する恐れはあります。 アルコール処理システムが完全に機能していても、アルコールの体への悪影響を100%防ぐことはできないためです。
また、DNAには複数の修復機能が備わっていますが、こうした修復機能もDNAを100%修復してくれるわけではありません。 遺伝子的な体質のために修復機能が上手く働かないという人もいます。