(2017年6月) "Cell" 誌に掲載されたケンブリッジ大学の研究によると、アルデヒドという化学物質によりDNAを修復する酵素が不足してガンになるリスクが増加する恐れがあります。
アルデヒドは、排気ガス・煙・建築資材・家具・接着剤・化粧品・シャンプーなど様々なところから検出される物質です。 これまでの研究でアルデヒドによりガンのリスクが増加することは示されていましたが、そのメカニズムは不明でした。
研究の概要
遺伝子改造したヒト細胞を用いた実験を行により、アルデヒドの一種であるホルムアルデヒド(*)とアセトアルデヒド(†)が、細胞内に存在しDNAの修復を助けるBRCA2というタンパク質(‡)の分解を引き起こすことが明らかになりました。
正常な細胞でもアルデヒドによりBRCA2タンパク質が減少しましたが、BRCA2タンパク質を作り出す遺伝子が変異体である細胞の場合には、アルデヒドによってBRCA2タンパク質が減少し、DNAの修復に必要なだけのBRCA2タンパク質を確保できない状態になりました。(*) 接着剤・塗料・防腐剤などの成分。 家具やフロアリング・壁・天井などに用いられる建材からも検出される。
(†) アセトアルデヒドは、お酒を飲むことによって体内でアルコールから作り出される有害な物質です。 日本人の半数近くは遺伝子のタイプ的にアセトアルデヒドを分解する能力が低く、そういう人(お酒を飲んで顔が赤くなるのが目印)はアセトアルデヒドの発ガン作用の影響を強く受けることになります。
(‡) DNAは細胞が分裂する際に頻繁にダメージを受けます。 そのダメージが放置されているとガンになるのですが、BRCA2はそうしたダメージを修復してくれます。