記憶力は低下せず怒りっぽくなるタイプのアルツハイマー病もある

(2014年5月) フィラデルフィアで開催された "American Academy of Neurology" の会合で発表された米国 Mayo Clinic の研究によると、一般的なアルツハイマー病とは症状が異なる特殊なアルツハイマー病が他の認知症と誤診されているケースが存在すると考えられます。

海馬健在型アルツハイマー病

この特殊なアルツハイマー病は「海馬健在型(hippocampal sparing)」あるいは「皮質型(cortical)」と呼ばれるアルツハイマー病で、海馬が健在なので記憶力は損なわれません。 しかし、一般的なアルツハイマー病と同じくβアミロイドとτタンパク質が脳に蓄積します。

海馬健在型アルツハイマー病ではτタンパク質によって、脳の領域のうち行動・運動的アウェアネス(motor awareness)・認知能力・言語と視覚の使用などに関与している部分のニューロンが優先的に傷つけられ、やがては破壊されてしまいます。

この海馬健在型アルツハイマー病にはアルツハイマー病の薬がことによると一般的なアルツハイマー病以上に有効であるため、正しい診断が重要となります。

海馬健在型アルツハイマー病の特徴
海馬健在型アルツハイマー病は主に比較的若い男性に発症します。 症状は、怒りっぽくなる、手足が自分以外の誰かに支配されているように感じる、眼に異常は無いのに視覚に障害が生じる、発話や関与する器官や聴覚には異常が無いのに言語障害が生じるなどで、一般的なアルツハイマー病よりも症状が速く進行します。
"Aging" 誌(2015年9月)に掲載されたUCLAの研究によると、海馬健在型アルツハイマー病の患者には平均以上に亜鉛欠乏症が多く見られます。

ただし、海馬健在型アルツハイマー病は多くのケースにおいて記憶力はほとんど損なわれません。 そのため、このタイプのアルツハイマー病は症状や発症年齢が似ている前頭側頭型認知症と誤診されがちです。

今回の研究において海馬健在型アルツハイマー病は、アルツハイマー病であることが確認された 1,821の脳サンプルの11%を占めていました。 このことから、海馬健在型アルツハイマー病の人は比較的多いのではないかと思われます。