アルツハイマー病はやはりβアミロイドにより引き起こされていた

(2014年10月) アルツハイマー病患者ではβアミロイドという毒性タンパク質のプラークが脳に蓄積することが知られており、このプラークがアルツハイマー病になる第一歩ではないかと考えられてきましたが、"Nature" 誌オンライン版に掲載された Massachusetts General Hospital の研究によると、どうやらその通りのようです。

研究者は次のように述べています:
「βアミロイドがアルツハイマー病を引き起こすという説は 1980年代半ば頃に初めて提唱されました。 βアミロイドが、①神経原線維がもつれて神経細胞内部が詰まる、②神経細胞が死滅する、③細胞が大量に死滅する悪循環の原因となる炎症が生じるなど、アルツハイマー病に見られる現象の引き金になるのだと考えられて来ました」

「この説が提唱されて以来、最大の疑問の1つは 『神経細胞を殺す神経原線維濃縮体(neurofibrillary tangle)の形成は本当にβアミロイドによるものなのか?』 というものでした。 今回の研究では新しい培養システムを用いて、アミロイドの蓄積のみによって、神経原線維濃縮体と、それに続く細胞死が引き起こされることを示すことに初めて成功しました」
過去の研究では、βアミロイドのプラーク蓄積がアルツハイマー病を引き起こしているという証拠はつかみきれていません:

  • アルツハイマー病になりやすい遺伝子変異を持つマウスを用いた実験では、βアミロイドのプラークが脳に蓄積し、記憶力が損なわれはしましたが、アルツハイマー病によるダメージの大部分を引き起こす神経原線維濃縮体は見られませんでした。

  • (マウス以外の)他のモデルを用いた研究では、神経原線維濃縮体は生じたもののプラークは生じないという結果でした。

  • アルツハイマー病患者から採取した神経細胞を培養するという実験でも、プラーク中の毒性アミロイドと、神経原線維濃縮体の材料となる異常なτ(タウ)プロテインが通常よりも多く検出されたものの、プラークや神経原線維濃縮体自体は(多量には?)検出されないという結果でした。
今回の研究では、「細胞の培養に通常用いられるのが液体を用いた2次元の培養システムであるために、脳内の3次元の環境を再現しきれないのだ」という想定に基づき、ジェルを用いた3次元型の培養システムを用いて、家族性アルツハイマー病を早期に発症する原因となる2つの遺伝子変異を持つヒトの神経幹細胞を培養しました。

6週間の培養期間ののち、神経幹細胞では通常のβアミロイドとアルツハイマー病に関与する毒性のβアミロイドの両方が増加していました。 それだけでなく、神経細胞内部を詰まらせて細胞死を引き起こす神経原線維濃縮体も見られました。

そして、βアミロイドのプラーク形成に必須であるとされるステップを遮断することによって、神経原線維濃縮体が形成されるのを阻止することが出来ました。 これにより、βアミロイドが(アルツハイマー病の発病)プロセスを開始する役目を担っていることが確認できました。

さらに研究グループは、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3-beta)という酵素(*)を阻害することによって、βアミロイドやアミロイドのプラークが大量に存在していても神経原線維濃縮体に存在するτプロテインの生産を阻止できることを発見しました。
(*) ヒトの神経細胞においてτプロテインをリン酸化する酵素。 神経原線維濃縮体に存在するτプロテインにはリン分子が過剰に存在する。