アルツハイマー病は腸内細菌バランスの乱れから始まる? (レビュー)

(2018年6月) ヴロツワフ医科大学(ポーランド)などの研究グループが腸内細菌とアルツハイマー病の関係についてまとめたレビューを "Molecular Neurobiology" 誌に発表しています。

レビューの概要

  1. 近年の研究により、腸と脳の双方向的な関係に腸内細菌叢(腸内細菌の種類構成)が関与していることが明らかにされている。
  2. 腸内細菌叢はアルツハイマー病(AD)のような神経変性疾患に深く関与していると考えられる。 腸内細菌叢を「第二の脳」と呼ぶ研究者もいるほどである。
  3. ヒトの腸内細菌叢は概ね安定的であるものの、ヒトの活動や環境により変化する。
  4. 腸内細菌は、宿主であるヒトの免疫系・脳の発達・行動に大きな影響を及ぼす。 腸内細菌が有するこのような影響力は、腸内細菌が生産するセロトニン/キヌレニン/カテコールアミン(ドーパミンやアドレナリンなど)などの神経伝達物質や神経調節物質およびアミロイド・タンパク質によるものである。
  5. 認知症やADを引き起こすメカニズムは次のようにして始まる:、①腸内細菌バランスが乱れる、②局所的および全身的に炎症が生じる、③ガット-ブレイン・アクシス(腸と脳の間の生化学的なシグナル伝達)に調節不全が生じる。
  6. 腸の内壁に備わるバリア機能が損なわれると、腸に住んでいる色々な①細菌②ウイルス③細菌やウイルスが生産する神経刺激性の物質が腸から漏れ出し、脳において神経炎症的な反応を支える。
  7. 近年の研究の動向を見ると、過去数十年間にわたり支配的であったアミロイド・カスケード仮説(amyloid cascade hypothesis)よりも腸内細菌の役割が大きいと考える炎症-感染仮説(inflammatory-infectious hypothesis)のほうが有力になりつつあるようである。 ADとの関係が指摘されてきたアミロイドβの蓄積は、ADとは無関係に高齢者の脳に見られる現象でしかないかもしれない。
  8. つまるところ、ADは腸から始まっている可能性が高い。 ADには腸内細菌バランスの乱れが密接に関わっている。
  9. したがって、食生活の改善などで腸内細菌叢を調節するというのがADの新しい治療法の1つとして有望だろう。