健康な人は薬用ソープの使用を控えましょう

"IDWeek 2012" で発表された研究によると、すべてのICU(集中治療室)患者に対して、耐性菌を保有しているか否かのチェックをせずに抗菌作用を持つ薬用の石鹸や軟膏を用いることで血流感染(BSI)のリスクを有意に引き下げることが出来ます。

この研究は、43の地域病院の75,000人近くの患者を対象に、各病院の品質改善チームの協力を得て行われたもので、研究に参加した43の病院に、3つの手法のうちのいずれかを試用してもらい、BSIを防ぐ上でどの手法が最も効果的であるかを調べました。

手法の1つ目は、通常のケアを継続し、ICU患者のMRSA検診を行い、MRSAを保有しているとされた患者を隔離するというものです。 2つ目は、1つ目と同様に、MRSAの検診と隔離を行ったうえで、クロルヘキシジンの消毒薬に入浴させ、抗菌剤のムピロシン軟膏を鼻の穴に塗布してMRSAを除菌するというものです。 そして、3つ目は、MRSA検診を廃止して、すべてのICU患者にクロルヘキシジンの消毒薬に毎日入浴させ、抗菌剤のムピロシン軟膏を鼻の穴に五日間にわたって塗布するというものです。

その結果、3つ目の手法がBSIを防ぐうえで最も有効でした。

3つ目の手法では、MRSAを保菌している(発症はしていないが、後に発症したり他者に移すリスクがある)患者の数が35%近くも減少(他の2つの手法では変化なし)し、MRSAやその他の病原菌によるBSIが50%近くも減少しました。

ICUでは、耐性菌が原因となる感染症が増えています。 MRSAなどの耐性菌は、鼻や肌の常在菌で一般の人には無害ですが、免疫力の弱っている患者には感染することがあります。 耐性菌に感染すると、入院期間が長くなり入院費用がかさむだけでなく、耐性菌が原因死亡するリスクまであります。

研究者は、次のように抗菌剤の乱用を強く戒めています:

「薬用セッケンや軟膏の使用は、ICU患者であるから必要なのであって、MRSAなどの病原性の弱い菌に感染するリスクの低い患者や健康な人たちが日常的に薬用ハンドソープなどの抗菌製品を使用するのは、ほぼ無意味であるばかりか、病原菌に薬剤への耐性を与えてやるようなものだ」