「最新健康ニュース」のコンテンツを閲覧以外で利用する方は「引用・転載・ネタ探しをするときのルール」をご覧ください。

転移しようとするガン細胞の生存率が抗酸化物質で上昇

(2015年10月) "Nature" 誌に掲載された UT Southwestern(米国)の研究によると、抗酸化物質は健康な細胞にとって有益となる以上にガン細胞にとって有益となるおそれがあります。

この研究で、メラノーマ(皮膚ガンの一種)を移植されたマウスに抗酸化物質を投与(*) するという実験を行ったところ、抗酸化物質を投与しない場合よりもガンの広がり(†)方が速かったのです。

(*) 投与 - administer。 "adminisiter" には「投与」という意味の他に「塗布」という意味もあります。

(†) 広がる - spread。 「転移する(metastasize)」という意味で使われているようです。
ガンの転移

メラノーマ細胞の転移についてはマウスとヒトとで同様であることが知られています。 転移とはガン細胞が当初に発声した場所から体の他の場所へと広がることで、ガン患者が死亡する主な原因です。

ガン細胞が体のある場所から別の場所へと広がるのが非効率なプロセスであって血流中に入り込むガン細胞の圧倒的大部分が死滅してしまうことは随分と前から知られていました。

今回の発見
今回の研究では、転移しようとするメラノーマ細胞が非常にきつい酸化ストレスを被り、それによって大部分が死滅してしまうこと、そして、そのように酸化ストレスに苦しむ転移細胞が抗酸化物質(*)に救われて転移細胞の生存率が上がってしまうことが明らかになりました。
(*) 酸化ストレスとは活性酸素種(ROS)と抗酸化物質のバランスが崩れた状態のことなので、抗酸化物質の補給によって酸化ストレスが緩和されるのでしょう。
研究者は次のように述べています:

「抗酸化物質が健康に良いという考えは大変に強固であり、ガン患者に抗酸化物質を投与するという臨床試験がこれまでにいくつも行われてきましたが、そのような臨床試験の中には抗酸化物質を投与された患者が早期に死亡するために試験が中止されたものが複数存在します。

今回の結果からすると、正常な細胞よりもガン細胞のほうが抗酸化物質のメリットを多く享受できるというのが抗酸化物質で死亡率が増加する理由だと思われます」
健康な人の場合

ガン細胞が存在しない健康な人の場合には、正常な代謝の一環として生じるROSによるダメージを抗酸化物質によって軽減できる可能性も十分にあります。

治療への利用
仮にヒトでもマウスと同様であるとすれば、ガン患者に大量の抗酸化物質を投与するのを控えたり、ガンの転移防止に酸化ストレスを促進する物質を利用したりするようになるかもしれません。 メラノーマ細胞が酸化ストレスに耐えて生き残るために利用する葉酸経路をブロックしてメラノーマ細胞の酸化ストレスを増加させるなどのアプローチも考えられます。