「最新健康ニュース」のコンテンツを閲覧以外で利用する方は「引用・転載・ネタ探しをするときのルール」をご覧ください。

人工甘味料メーカーの資金提供により行われた研究は鵜呑みにできない

(2016年9月)"Plos One" に掲載されたシドニー大学などの調査により、人工甘味料が人体に及ぼす影響に調べた研究のうち人工甘味料業界(以下「業界」)の資金提供により行われたものにバイアス(偏り)が見られることが明らかになりました。 このようなバイアスは、世間が人工甘味料の健康への影響を過剰に評価する原因となりかねません。出典: Artificial Sweeteners Hit Sour Note with Sketchy Science参考:Relationship between Research Outcomes and Risk of Bias...

調査の概要
人工甘味料の人体への影響(*)について調べた31のレビュー(†)を調査しました。

(*) ダイエットや糖尿病のリスクへの影響。

(†) 1978年~2014年に発表されたもの。 レビューとは、それまでに発表された複数の研究のデータを調査する研究のこと。 今回の「シドニー大学などの調査」というのもレビューですが、紛らわしくならないように「調査」という表現にしています。
結果

業界が金銭的にレビューに及ぼす影響は、①レビューそれ自体への資金提供と、②レビュー執筆者個人に対する利益供与の2つに分けられます。

レビューへの資金提供の影響
  • 31のレビューのうち、4つが業界の資金提供によるもので、3つが糖類業界の資金提供によるもの、1つがその他の食品業界の資金提供によるもの、7つが政府の資金提供によるものだった。
  • 研究資金を提供する業界の影響はレビューのデータから結論に至るまで随所に見られ、人工甘味料の有益性を強調し有害性を無視するように歪められていた。
  • 業界の資金提供により行われた研究は、人工甘味料に関する研究のうち業界以外の資金提供により行われたものに比べて、レビューの「結果」が人工甘味料に好意的である率が17倍近くも高かった。 「結果」が人工甘味料に好意的なものである割合は、前者では3/4で後者では1/23だった。
    研究論文は概ね、「研究の背景」「方法」「結果」「結論」という構成になっています。 「結果」が事実を報告するだけなのに対して、「結論」では執筆者が「結果」をどのように解釈したかが述べられます(執筆者の主観が混じる)。
  • 「結論」については、この数字は4/4と15/23だった。
    今回の調査を行ったシドニー大学の研究者によると、「結論」よりも「結果」のほうが重要です。 「結果」は、政府などが作成する食事ガイドラインに影響することがあるためです。
  • 興味深いことに、人工甘味料業界と競合関係にある業界が資金を提供した4つのレビューはいずれも、「人工甘味料に健康上のメリットは無い」 という結論になっていた。
執筆者個人への利益供与による影響
  • 31のレビューのうち22において、(レビューを行うための資金提供とは別に)執筆者が食品業界から何らかの利益を供与されていた。 この22のレビューのうち13では「利害関係」が伏せられていた。

    研究論文には「conflicts of interest(利害関係)」という項目があり、研究の内容に影響しかねないような利害関係をそこに報告するようになっています。 当該の研究の資金提供者・執筆者の所属・執筆者への利益供与などが、(後ろめたいことが無ければ)ここで報告されます。

    今回の調査では、レビューを次の4つのタイプに分類しました: ①利害関係が開示されている、②利害関係が存在するのに記載されていない、③「利害関係」という項目がレビューに存在しない、④利害関係が存在しないことが宣言されている。

    ②については、色々なデータベースで研究者名を照合して利害関係の有無を確認しました。 ③と④の場合にも同様に利害関係の有無を調べて、利害関係が存在するケースは②に分類し直しました。
  • 執筆者が食品業界から利益を供与されていた22のレビューは、そうでない9つのレビューに比べて、「結論」が人工甘味料に好意的である率が7.3倍だった。
    利益供与のレビューでは18/22の割合で「好意的」。非利益供与のレビューでは4/9の割合。
  • 食品業界から利益を供与されていない執筆者による9つのレビューの中には、人工甘味料が有益であるという「結果」になったものは1つも存在しなかった
コメント
シドニー大学の研究者は次のように述べています:

「今回の調査結果から、人工甘味料メーカーの(人工甘味料が健康にとって有益だという)主張に対しては懐疑的であるべきだと考えられます。 人工甘味料の人体への影響について調べた既存のレビューの多くが、レビューの資金提供者である人工甘味料メーカーの(利己的な)要求に応えるものであるように思われるからです。 こういったレビューでは、レビューの手法こそ標準的であっても、有益な結果が誇張されています」

「甘味料メーカーが資金を提供するレビューだけでなく、食品業界や飲料業界が資金を提供するレビューについても、の結果を鵜呑みにするべきではありません」