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新年の誓いでは宣言よりも問いかけを

(2015年12月) "Journal of Consumer Psychology" に掲載されたカリフォルニア大学アーバイン校などのメタ分析によると、自分自身あるいは他人の行動を操るには命令よりも問いかけが効果的です。出典: To Bolster a New Year's Resolution, Ask, Don't Tell

メタ分析の概要
このメタ分析では、「問いかけ-行動」効果(question-behavior effect)と呼ばれる現象について調べた104の研究のデータを調査しました。 問いかけは様々な分野(*)において効力を発揮しており、効果の持続期間は6ヶ月超に及びました。
(*) カンニング防止・運動奨励・リサイクル・性差別抑止など。

「問いかけ-行動」効果の効果が最も強かったのは、問いかけの媒体としてPCあるいは書面を用い、ターゲット(特定の行動を起こさせたい相手)に「はい」か「いいえ」で答えさせた場合でした。 また、ターゲットが当該の行動を起こす時期を指定しない方が良い結果となりました。

問いかけ効果のメカニズム

例えば「リサイクルに協力しますか?」と問いかけられた人は、リサイクルの機会が巡ってきたときに問いかけられたことを思い出して、リサイクルをしないと落ち着かなくなります。 そしてその落ち着かなさを解消するためにリサイクルをしてしまうのです。

このようなメカニズムの性質上、このテクニックは社会的通念や個人的な価値観からターゲットが心の中で「推奨されるべきことだ」肯定しているけれど実行は気が進まないというものに関して特に有効です。 運動習慣にしてもリサイクルにしても、この条件に合致します。

利用法

例えば新年の誓いで禁煙をしたいときには、「今年こそ禁煙を!」と自分自身に言い聞かせるよりも「今年こそ禁煙をする? それともしない?」と自分問いかける方が禁煙に成功しやすくなります。

今回の研究結果は、政治やマーケティングなどで他人の行動を左右したい場合にも利用できます。 例えば、投票率を上げたいときにも「投票に行きましょう」ではなく「投票に行きますか? やめときますか?」と問い尋ねる形式にします。

その一方で、立候補者が「~に清き一票をお願いします」と要求する代わりに「~に清き一票をお願いしますか?」と尋ねても効果は薄いでしょう。 その候補者に投票するのが道徳的に正しいわけではありませんから。

「~に清き一票をお願いしますか?」「~をよろしくお願いしますか?」「最後のお願いにやってまいりましたか?」と連呼されても迷惑度が増すだけです。
さらに、(メカニズムの性質からして効果は薄いのではないかと思いますが)研究チームによると「問いかけ-行動」効果は販売促進にも有効かもしれません。 例えば「この製品をお買い求めください」ではなく「この製品をお買い求めくださいますか?」とするのがよいということでしょうか。
「いらっしゃいませ」を「いらっしゃいましたか?」にする、「おじゃまします」を「おじゃましますか?」にするなどの改善策も考えられます。
悪習慣の抑制には逆効果
今回のメタ分析の対象となった研究の中に、推奨されるべきでない行為(授業をサボるとか飲酒するなど)について「問いかけ-行動」効果を用いて、それらの行為が助長されるという結果になったものが1つあります。
「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」 という麻薬撲滅キャンペーンのフレーズはどうなのでしょうね。
禁止命令と肯定命令の区別は?

プレスリリースには「問いかけ-行動」効果の有効な利用法の一例として、高校生の子供の飲酒運転を抑制したいときに「飲酒運転をしちゃあダメだよ」と注意するよりも「飲酒運転するの?」と問いかける方が良いというものが挙げられています。

カンニング防止にも「問いかけ-行動」効果が使えるとありますし、禁止命令も問いかけにできるのでしょう。 そうすると問いかけには、そのベースとなる命令が肯定(~しなさい)である場合と禁止(~するな)である場合とが存在するということになります。
問いかけは疑問文なので、その元の形としては肯定文と否定文の両方が常にあり得ます。

だとすれば「飲酒運転するの?」という問いかけの意図が「飲酒運転をしなさい」という肯定命令であると理解される、あるいは「リサイクルしますか?」という問いかけの意図が「リサイクルをするな」という禁止命令であると理解されることがあってもおかしくはないはずです。 それなのに前者は禁止命令と理解され後者は肯定命令と理解されるというのはどういうことなのでしょうか?

道徳や社会通念的に健全とされるものについては肯定命令だと理解され、有害とされるものについては禁止命令だと理解されると考えれば筋は通りますが、そうすると「悪習慣の抑制には逆効果」に出てくる研究がひっかかります(研究の具体的な内容は不明ですが)。