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遺伝的体質によってはアスピリン常用による心血管疾患予防の効果が無いばかりか逆効果に

(2014年7月) 抗血小板療法に用いられたり、心血管疾患を予防する目的で低用量で用いられるアスピリンですが、"Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology" 誌オンライン版に掲載された研究によると、COMT(catechol-O-methyltransferase)に関与する遺伝子に変異がある人の場合には、心血管的なベネフィットが無いばかりか、僅かに逆効果となる可能性すらあります。
COMT
COMT はカテコールアミンと呼ばれるホルモン群(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)の代謝に深く関わっている酵素です。 カテコールアミンは高血圧を始めとする様々な疾患に関わっています。
この研究では、"Women's Genome Health Study" と呼ばれる2万3千人超の女性を対象に10年間にわたって低用量アスピリンまたはビタミンE の心血管疾患予防効果を調べた無作為化二重盲検試験のデータを分析しました。

COMT 遺伝子には "val/val" 型、"met/met" 型、そして "val/met" 型という3つのタイプがあり、データの23%を占める "val/val" 型の女性は先天的に心血管疾患のリスクが低い体質なのですが、この体質がアスピリンを飲むことによって消滅していました。

"val/val" 型の女性では、プラシーボを飲んだときよりもアスピリンを飲んだときの方が心血管イベントの発生率が増加していたのです。 "val/val" 型の女性のうちアスピリンを飲んだグループでは、プラシーボを飲んだグループに比べて、(10年間において)91人に一件の割合で新規発症の(incident)心血管疾患が増加していました。

一方、"met/met" 型の女性(全体の28%)では、アスピリンの服用により心血管イベントのリスクが低下していました。 "met/met" 型の女性のうちアスピリンを飲んだグループでは、プラシーボを飲んだグループに比べて、10年間において91人に一件の割合で心血管疾患が減少していました。

"met/met" 型の女性では、ビタミンE を服用したグループでも、プラシーボのグループに比べて心血管疾患のリスクが減少していました。

研究者は次のように述べています:
「心臓疾患のリスク要因を抱えている人すべてにアスピリンを処方するのではなく、遺伝子検査を行って、アスピリンが有益だと判明した人のみにアスピリンを処方するのが良いでしょう」
"val/val" 型の女性は先天的に心血管疾患のリスクが低いのは、COMT にアドレナリンを分解する作用があるのと関係している可能性があります。 アドレナリンは心血管系の調節に密接に関与しています。
「ストレスに反応してアドレナリンの量が増加すると血圧が上昇しますが、高い血圧は心臓疾患の一因です。 "val/val" 型の人では "met/met" 型の人よりも COMT によるアドレナリン分解が効率的に行なわれるためにアドレナリンが少ないという可能性が考えられます。

"val/val" 型の人ではアドレナリンが少ないために自然と心血管疾患のリスクが減っているのではないかというのが我々の現時点での仮説です。 アドレナリンと心血管疾患のリスクの関係にアスピリンがどのように関与するのかについては全くわかっていません」