アスピリン常用で乳ガンの生存率は向上しない; 乳腺密度は低下する

(2015年12月) "2015 San Antonio Breast Cancer Symposium" にて発表予定であるペンシルバニア大学の2つの研究によると、アスピリンの常用によって乳ガン患者の生存率が向上しないどころか悪化しますが、その一方で乳腺密度を低下させる(乳ガンを発見しやすくなる)作用があります。出典: Aspirin Use Does Not Improve Outcomes for Cancer Patients...

乳ガン患者の生存率
研究の方法
乳ガンと診断された患者 1,000人を対象に、アスピリンの使用状況とガンの病状および生存率との関係を調べました。 乳ガンの種類には、受容体陽性(*)・HER2陽性・トリプルネガティブが含まれていました。 乳ガンと診断される30日以上前からアスピリンを常用していた患者は14%でした。
(*) 受容体陽性 - receptor positive。 前後関係から察するに「ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体が陽性)」という意味でしょう。
結果
乳ガンの種類に関わらず、アスピリンを常用していたグループで生存率が改善していませんでした。 それどころか、低用量を常用しているグループは診断前にアスピリンを常用していなかったグループに比べて、5年生存率が統計学的に有意に悪化していました。
「結果」の解読

おそらく、アスピリン常用グループを診断前の服用習慣によってさらに2つのグループに分けたのでしょう。 すなわち全部で次の3つのグループ: ①アスピリンを常用していなかったグループ、②診断前からアスピリンを常用していたグループ、③診断後にアスピリン常用を開始したグループ。

そしておそらく②と③の合計と①との比較では生存率に違いが無かった(1文目)けれども、②のグループだけに限って分析すると生存率が悪化していた(2文目)ということなのでしょう。

ただし、「診断前にアスピリンを常用していない」という条件には①と③の両方が合致するので、2文目の②の生存率において比較対象となったグループが①と③のいずれなのか、あるいはその両方なのかは不明です。 「診断前にアスピリンを常用していなかった」という言い方からすると比較対象は③だったのかもしれません。 ①ならわざわざ「診断前に」と限定しないでしょうから。

あと、「低用量を常用」という部分にこれといった意味は無いと思います。 アスピリンの常用が一般的に低用量で行われるためです。
コメント
研究者は次のように述べています:
「過去の複数の研究でアスピリンに抗ガン作用のある可能性が示されていますが、これらの研究の多くは予備的で前臨床的なものであり死亡率低下の効果を明確に肯定するものではありません。 さらに、これらの研究では診断前のアスピリン使用を考慮していませんでした。 ただし今回の結果にしても、さらに大規模な研究で確認する必要があります」
乳腺密度の減少
研究の方法

2012~2013年の間にマンモグラフィー(乳腺X線撮影)の定期検査を受けた女性2万6千人の医療記録を調査しました。

結果

アスピリンを常用している女性は乳腺密度が低いという結果でした。 乳腺密度が非常に高いグループに比べて乳腺密度が普通あるいは低いグループの方が、アスピリンを常用している女性の割合が大きかったのです。 アスピリンの服用量についても、服用量が多いと「乳腺密度が非常に高い」グループに分類されることが少ないという結果でした。

このアスピリンと乳房密度の関係は、60才未満の女性および黒人女性で顕著でした。
乳腺密度
乳腺密度とは、乳房内の結合組織と腺組織に対する脂肪組織の割合のことで、脂肪組織が多いほど乳腺密度は低くなります。 乳腺密度が高いと乳腺x線の画像が判別しにくくなります。 さらに、乳腺密度が高いと乳ガン(エストロゲン受容体陽性タイプと陰性タイプの両方)のリスクも増加すると考えられています。