喘息患者では致命的な前立腺ガンのリスクが低下

(2015年5月) "International Journal of Cancer" に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学などの研究で、喘息の病歴がある男性は前立腺ガンのうち致命的なもの(死亡の原因となった前立腺ガンまたは転移性の前立腺ガン)を発症しにくいという結果になりました。 出典: Men with Asthma Less Likely to Develop Lethal Prostate Cancer

過去の複数の研究では今回の結果に反して、喘息の炎症によって前立腺ガンのリスクが増加する可能性が示唆されていますが、今回の研究は①研究の規模が大きい、②前立腺ガンのうち致命的なものに限定したという点において過去の研究と異なります。

研究の方法

この研究では、40~75才の男性 47,880人を 1986年~2012年まで追跡調査しました。 47,800人のなかに 1986年の時点でガンだった人は含まれていませんでした。 追跡期間中には2年に一度アンケート調査を行いました。 アンケートの項目は人口統計学的な要素(性別・年齢・人種・年収など)、診療歴、服用している薬、および生活習慣でした。

結果

追跡期間中に前立腺ガンと診断された人のうち、喘息と診断されていたのは9.2%、花粉症と診断されていたのは25.3%でした。 致命的な前立腺ガンになった人の数は798人でした。

喘息の病歴があるグループでは致命的な前立腺ガンのリスクが29%低下しており、全体的に見て前立腺ガンで死亡するリスクが36%低下していました。

喘息の薬を使用しているか否かや、喘息と診断されたのが年を取ってからかどうかなどを考慮しても、この結果の統計学上の有意性は消滅しませんでした。

花粉症との関係

花粉症の病歴があるグループでは逆に、致命的な前立腺ガンのリスクが僅かに(10~12%)増加していました。

研究の背景

今回の研究は以前に行われたマウス実験の結果に基づいています。 このマウス実験では、前立腺腫瘍に浸潤する免疫細胞により「Th2炎症」と呼ばれる免疫応答が生じることが示されました。

研究者は次のように述べています:
「喘息が慢性炎症(特にTh2炎症)の病気であるという意見があります。 そしてTh2炎症ガンにも関与している可能性があります。 そこで今回の研究でも、喘息患者は前立腺ガンの罹患率が高いだろうと予想していました(ところが予想に反した結果となりました)」
考えられる理由
研究者によると、Th2炎症にもいくつかのタイプがあって、喘息を助長するTh2炎症とガンを助長するTh2炎症とでは種類が異なっている可能性があります。 さらに、喘息患者では好酸球やマスト細胞(いずれも白血球の一種)の量が増えていて、それが腫瘍細胞を攻撃しているという可能性も考えられます。