(2016年3月) "Journal of Diabetes Science and Technology" に掲載されたオハイオ大学などの研究によると、糖尿病になりそうな人は左右の手の指紋が非対称である程度が大きいため、非対称性の程度を将来の糖尿病リスクの判定に用いることができるかもしれません。
340人の成人の指紋を採取して、隆線カウント(ridge-counting)という技術とウェーブレット解析(wavelet analysis)というFBIも使用している技術を用いて分析して精度を比較したところ、後者の方が指紋の非対称性を正確かつ詳細に識別でき、糖尿病リスクの判定能力に優れるという結果でした。
340人のうち200人は2型糖尿病患者、57人は1型糖尿病患者、そして83人は糖尿病の兆候も家族歴もない人でした。
糖尿病はリスクの高さを早期に発見できるほど糖尿病への対処が容易になりますが、今のところ遺伝子検査などによりリスクを判定するか糖尿病の兆候から進行状況を判断するかしかありません。
しかし、糖尿病の兆候から進行状況を判断するとなると既に体の状態が悪化していることになりますし、遺伝子検査はコストがかかるうえ万人が利用できるわけではありません。 また遺伝子検査以外の検査では、糖尿病発症が数年後に迫っていなければリスクの増加を判定できません。
指紋は遺伝子と胎児のときの環境(*)の両方に影響されるため、指紋から糖尿病のリスクを判定する技術が実用化されれば、既存の検査法よりも正確に、(スマートホンのアプリで)安価かつ簡単に、そして遠い将来のリスクを判定できるようになります。
今回の研究は、"Fluctuating Asymmetry" と呼ばれる仮説に基づいています。 "Fluctuating Asymmetry" では「生体の環境的なストレスへの適応力は体の左右の対称性に反映される」と考えます。 体の左右の対称性が崩れて非対称であるほどに環境的なストレスへの対応力が損なわれて病気などにかかりやすくなるという仮説です。