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大気汚染と遺伝子変異の組み合わせで自閉症リスクが増加

"Epidemiology" 誌(2014年1月)に掲載予定の米国の研究によると、自閉症になりやすい遺伝子変異体がある人では、大気汚染によって自閉症のリスクがさらに増加します。

この遺伝子変異体は「MET遺伝子変異体」と呼ばれるもので、脳と免疫系に存在するMETタンパク質の発現をコントロールしています。 MET遺伝子変異体は過去の複数の研究において、自閉症に関与していることが示されています。

研究の概要

この研究では、米国カリフォルニア州に住む2~5才の子供408人のデータを分析しました。 このうち、自閉症または ASD の基準に合致したのは252人でした。 大気汚染への暴露状況は、母子のそれまでの居住地域、交通量、大気汚染の指標から割り出しました。 MET遺伝子変異体の有無は血液サンプルを用いて検査しました。

コメント
この研究の趣旨が遺伝的要因と環境的要因の両方による自閉症への影響であるためプレスリリースで明言はされていませんが、研究者のコメントから察するに大気汚染だけでも自閉症のリスクが増加するようです:
「今回の研究では、遺伝子変異体があって大気汚染にさらされた子供では、遺伝子変異体が無く大気汚染にさらされてもいない子供よりも、自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクが増加することが示されました」
別の研究者も次のように述べています:
「自閉症のリスクとして遺伝的要因と環境的要因の両方があるというのは広く認められている説ですが、十分に確認済みの遺伝的要因(MET遺伝子変異体)と、それ自体も自閉症のリスク要因である環境的要因との相互作用を示した研究は今回のものが初めてです」
関連研究
大気汚染のみでも自閉症リスクが増加するという研究

"Environmental Health Perspectives" 誌(2013年6月)に掲載されたハーバード大学の研究では、胎児のときに母親経由で大気汚染にさらされた子供では自閉症のリスクが増加するという結果になっています。

の研究で妊娠中の大気汚染の度合いと自閉症児の割合の関係を調べたところ、空気中に漂う水銀やディーゼル・エンジンの排気ガスの粒子が最も多い地域では最も少ない地域に比べて、自閉症児の割合が2倍になっていました。

水銀や排気ガスほどではありませんが、鉛やマンガンなどの汚染物質でも自閉症のリスクが増加していました。 これらの物質は、いずれも神経毒性を有しているだけでなく、母体から胎児へと移動することが知られています。

水銀はワクチンにも使われていますが、研究者は、大気汚染と自閉症リスクの間に因果関係があるにしても、水銀よりもディーゼル・エンジンの排気ガスが自閉症の原因になっているのではないかと考えています。
大気汚染では自閉症リスクは増加しないという研究

同じく "Environmental Health Perspectives"(2015年1月)に、大気汚染では自閉症のリスクは増加しないという結果になった研究も発表されています。

この研究では、欧州(スェーデン、オランダ、イタリア、スペイン)に在住の子供 8,079人のデータを分析して、胎児のときに母親が住んでいた場所の大気汚染物質(*)の濃度と子供が自閉症である率との間に関係が認められないという結果になりました。
(*) 窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM2.5~PM10)