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自閉症の原因はオートファジーの不足? 治療薬の可能性も

(2014年8月) "Neuron" 誌に掲載されたコロンビア大学の研究によると、自閉症の人は子供も大人も、脳のシナプスが過剰に存在します。 このシナプスの過剰は、脳の発達過程においてシナプスが間引かれる速度が遅いことによります。

シナプスの間引き

シナプスは神経細胞(ニューロン)の接合部であって、神経細胞はシナプスを介して別の神経細胞とコミュニケーションを取ります。 そのため、シナプスが過剰に存在すると脳の機能に影響が生じます。

脳が正常に発達する場合には、幼少時に一気に形成されたシナプスのうちの半数ほどが思春期後半までに「間引き(pruning)」により除去されます。

研究グループはマウス実験で、ラパマイシン(シロリムス)という免疫抑制剤を用いてマウスの自閉症的な振る舞いを改善することに成功しました。

ラパマイシンは副作用(*)が理由で使えないことがありますが、自閉症と診断された後にも自閉症を治療できる薬がラパマイシン以外にも今後発見される可能性もあります。
(*) 口内炎、高コレステロール血症、肺浸潤、血小板減少、下痢、高血圧など。(ソース
シナプスの過剰、オートファジーの不足

シナプスに関与する遺伝子の中に自閉症にも関係するものが多数存在することは知られており、以前から自閉症の人にはシナプスが多いのではないかという仮説が立てられていました。

今回の研究ではまず、その説を検証するために、(自閉症を死因とせずに)死亡した自閉症者26人(2~9才が13人、13~20才が13人)の脳と、自閉症ではない子供の死者22人の脳を調査および比較しました。

皮質ニューロンから分岐している樹状突起の数を数えてシナプスの密度を測定したところ、自閉症が無い場合には子供時代の終わり頃までに樹状突起の量がほぼ半減していたのに対して、自閉症がある場合には樹状突起が16%しか減っていませんでした。

さらに、自閉症児の脳細胞にはオートファジー(*)と呼ばれる分解経路が極度に欠乏していて、細胞も古くて傷ついた部分だらけでした。
(*) オートファジー(自食作用)とは、古くなったり、損傷を受けたりしたタンパク質を分解して、除去またはリサイクルする細胞内のシステムのこと。(ソース
オートファジー不十分 ⇒ シナプス過剰

研究グループはさらに、マウスを用いた実験により自閉症者でシナプスの間引きが行われない原因が mTOR というタンパク質にあることを突き止めました。 mTOR が過度に活性化していると、脳細胞からオートファジー能力の大部分が失われるのです。

そして、オートファジーが損なわれた状態では、シナプスの間引きが十分に行われずにシナプスが過剰に残りました。(通常であればオートファジーの自食作用によって余分なシナプスを分解・除去されるのが、オートファジーが機能不全であるためにシナプスの分解・除去が進まないということでしょう)

研究者は次のように述べています:
「世間的には、学習においてはシナプスが新しく形成されることが必要だと考えられていますが、不要なシナプスの除去も同じほどに重要なのです」
ラパマイシンで自閉症様の振る舞いが消滅

次に研究グループは、自閉症様の振る舞いを示しているマウスにラパマイシンという mTOR を阻害する作用を持つ薬を投与することによって、オートファジーを正常化し、シナプスの間引きが行われるようにして、自閉症様の振る舞いを逆行(改善)させることに成功しました。

つまり、ラパマイシンをマウスが自閉症的な振る舞いを示すようになってから投与しても効果があったわけです。 この結果から、mTOR を阻害するというアプローチが自閉症患者の治療に有効である可能性が示唆されます。 上記の死者の脳の調査でも、自閉症患者ほぼ全員の脳から過剰に活性化した mTOR が大量に見つかっています。