自閉症は完全に治るケースも少なくない

自閉症は一生治らないと考えられていますが、必ずしもそうでないことを示す研究もあります。
コネチカット大学の研究

(2013年1月)"Journal of Child Psychology and Psychiatry" に掲載されたコネチカット大学(米国)の研究により、完全に自閉症であると診断された子供のなかに、思春期から青年期にかけて自閉症の症状が完全に消滅するケースのあることが明らかになりました。

自閉症の症状が消滅するのが自閉症治療の試みの結果なのか、遺伝的・生物学的な理由によるものなのかは未だ不明ですが、研究グループでは両方の組み合わせである可能性が高いと考えています。
研究の方法

コネチカット大学の研究では、5歳の時点で自閉症であったが研究開始の時点では「通常」であった(つまり、自閉症の症状が消滅した)子供たち34人を分析しました。 これらの子供たちは、大部分が2~4歳の頃に自閉症と診断され、研究の時点(すでに自閉症が治っている)ではおよそ8~21歳でした。

これら34人のグループを、44人の高機能自閉症者のグループ、および34人の非自閉症者と比較しました。

結果

分析の結果、自閉症が消滅したグループでは、自閉症の症状のあった頃でも、社会障害(social impairment)の兆候が、44人の高機能自閉症者のグループよりも軽度であったことがわかりました。 一方、コミュニケーション障害と、繰り返し行動については、両グループの間に違いはありませんでした。

自閉症が消滅したグループにおいては、自閉症が消滅した後は、社交能力障害、コミュニケーション障害、顔の認識能力のいずれについても自閉症的な兆候は見られませんでした。 全員が通常学級に参加し、一切特別扱いされていなかったのです。

研究グループでは今後、自閉症が消滅したグループを対象に、脳のスキャンを行ったり、自閉症診断後に受けた治療を調査したりする予定です。

コメント
研究者は次のように述べています:

「自閉症児の中には、自閉症スペクトラムから抜け出して、普通の思春期の子供のように機能する子供がいます。 サポートを必要とすることなく普通の(学校の)クラスに加わるのです。

このように自閉症が消滅するケースが全体の何%に当たるのか正確には把握できていませんが、こういうケースは決して稀(まれ)ではありません。 自閉症が消滅するケースは25%未満といったところでしょうか。

自閉症はどのようなケースでも良質な治療で改善しますが、自閉症の症状が消滅するというのは治療法だけの問題ではありません(遺伝的・生物学的な要因もあるので)。 わたしは優れた治療を受けながらも自閉症の症状が消滅しなかった子供を何千人と見てきました。 ですので、お子さんの自閉症の症状が消滅しなくても、決して自分(親)のせいだなどと考えないでください」

「自閉症の消滅は、行動療法(behavioral intervention)のお陰である可能性が高いと思われます。 しかし、この行動療法は2~3年、あるいは5年という長期的なスパンで集中的に行う必要があります。

そして、1つ大事なことがあります。 それは、自閉症が消滅しても治療を止めてしまってはいけないということです。 いったん自閉症が消滅した後に再び自閉症になるというケースはこれまでに見ていませんが、そうならないという保証はありません。 自閉症の症状が無くなった後も、注意力や不安感などの問題が生じるリスクはあります。 ですので、何らかの形での治療を続けることが必要となるでしょう。

自閉症を消滅させる上では、早期の診断と治療がとても重要です。 お子さんに少しでも自閉症の疑いがあるのなら、すぐにでも診断を受けましょう。 医師に『もう少し様子を見てみましょう』と言われても、様子を見ている場合ではありません。 すぐに自閉症チェックを受けさせましょう」
イェシーバー大学の研究

(2013年8月) "Cerebral Cortex" 誌に掲載されたイェシーバー大学(米国)の研究では、高機能自閉症児の場合にはティーンエイジャー(13歳~)になる頃に社会的なコミュニケーション能力における障害がなくなる可能性が示されています。

研究の概要

5~17歳の普通の子供と高機能自閉症の子供222人を対象に、雑音(ざわめきや、雑踏の音でしょうか)の音量が徐々に大きくなっていく中で、どの程度発話を理解できるかを調べました。

その結果、低年齢の6~12歳の子供では普通の子供と自閉症児とで発話を聞き取る能力に格段の差がありましたが、13~17歳の子供では普通の子供と自閉症児との間の差が無くなっていました。
解説

自閉症児には、発話に関与する視覚的な合図と音を理解できないという障害が見られますが、この研究によると、高機能自閉症児の多くは成長と共にこの状態を脱します。 そして場合によっては、思春期を迎える頃には完全にこの障害が消滅することもあります。 すなわち、自閉症の非社会的な症状のうちの少なくとも一部は、恒久的であるわけでも神経的に固定されているわけでもないことが示唆されているわけです。

自閉症児においては触覚・聴覚・視覚から入って来る情報の統合の仕方が普通の子供と異なっていることが過去の研究で示されています。 この研究では、そのうちの聴覚と視覚から入って来る情報を統合する能力が高機能自閉症児においては成長に従って発達し続けることが示されました。

研究者によると、コミュニケーションにおいては聴覚による発話のシグナルと視覚による発話のシグナルを統合する能力(つまり、この研究で発達し続けることが示された能力)が重要であり、この能力があれば学習もコミュニケーションも改善されると考えられます。

コメント
研究者は次のように述べています:
「今回の結果は非常に有望です。 高機能自閉症児においては、発話に用いられる神経生理学的な回路が根本的に壊れているわけではないのです。 したがって、何らかの方法によって回路の早期回復を促進することができる可能性があります」
「思春期にASD(自閉症スペクトラム)の子供が普通の子供のように振舞い始める理由は不明です。 脳内で生理学的な変化が起こったのかもしれませんし、それまでの介入(治療)の効果が出たのかもしれませんし、その両方かもしれません。 この点については、今後調べていきたいと思います」