寄生虫やお風呂が自閉症に効果?

(2013年12月) "American College of Neuropsychopharmacology" で発表予定の2つの研究によると、高機能自閉症の成人は寄生虫やお風呂によって自閉症の症状が軽減する可能性があります。

寄生虫が自閉症に効果?
研究の方法

この研究では、高機能自閉症の成人10人に豚鞭虫(Trichuris suis)の卵を12週間かけて飲み込んでもらいました。 飲み込んだ量は、2週間ごとに 2,500個(計 15,000個)でした。 そして、4週間の空白期間の後に、(同じ10人に)プラシーボを豚鞭虫の卵と同様に12週間にわたって飲み込んでもらい、効果を比較しました。

結果

豚鞭中の卵を飲み込んだときには、適応力が増加し、同じことを何度も繰り返す行動が減少しました。 さらに、自分の予期から(物事の進展が)逸脱することで不快感を感じる(イマジネーション障害のことでしょう)ことも減っていました。 このような不快感により癇癪を起こすことが減っていたのです。

鞭虫について
一般的に「鞭虫」というと Trichuris trichiura のことで、Trichuris trichiura はヒトの体内で繁殖しますが、今回の実験で使用した鞭虫は本来は豚を宿主とする豚鞭虫(Trichuris suis)なのでヒトに害を与えません。

豚鞭虫はヒトの体内に定着せず腸内で繁殖できませんし、腸壁を食い破って腸の外に出ることもないため病気の原因とならないのです。 豚鞭虫は2週間で腸内から排除されます。

鞭虫に寄生されたときの症状は主に下痢ですが、今回の研究で豚鞭虫に寄生されたときの下痢の頻度はプラシーボを服用したときと同程度でした。

解説

寄生虫によって自閉症の症状が緩和されるのは、自閉症に見られる免疫系の過剰な活動による炎症が寄生虫によって抑制されるからではないかと考えられます。

自閉症の治療に寄生虫を用いるという試みの背景には「衛生仮説(hygiene hypothesis)」という考えがあります。 衛生仮説とは「大昔から人体に存在していた細菌や寄生虫には人体の免疫応答を調整する作用があり、現代になってこれらの細菌や寄生虫が人体に存在しなくなったために自己免疫疾患が生じるようになった」とする仮説です。

ただし、鞭虫の医学的な有用性には疑問も残ります。 クローン病(炎症性大腸疾患の一種)を鞭虫で治療するという最近の臨床試験でも、鞭虫の有効性が否定されるという結果に終わっています。

お風呂が自閉症児に効果

研究グループは上記の研究と同時に、自閉症にお風呂(hot bath)が効くという研究も発表する予定です。

こちらの研究は、自閉症の人の1/3において熱が出たときに自閉症の症状が緩和するという事例に基づいて行われました。

研究の概要

15人の自閉症児に38.8℃または36.7℃のお風呂に日替わりで入らせるという試験を行ったところ、38.8℃のお風呂に入った日には社会的な振る舞いが改善していました。

解説

お風呂が有効なのは、お風呂に入ることによって発熱があると体が錯覚して体内で抗炎症作用を持つシグナルが放出されるからだと考えられます。

留意点
研究者によると、寄生虫にしてもお風呂にしても実用化の前に今後の研究で効果を確認してゆく必要があります。