コンテンツの利用をお考えの方は引用・転載をするときのルールをご確認ください。

体内で酒が造られる奇病 「ビール腹病」(2/2ページ)

体内で炭水化物からアルコールが作られていた

病院の調べにより、男性が日頃から大量の炭水化物を摂取していたことがわかりました。 炭水化物の含まれる食事をするたびに、男性の腸内に大量に存在する S. cerevisiae が、炭水化物からエタノール(エチル・アルコール)を作り出し、そのために男性が酔っていたのです。 文字通り「ビール腹」だというわけです。

男性の妻の話では、日曜日に教会で礼拝しているときなどに突然酔っ払い始めるという症状で、食事を抜いたときや、運動後、前夜に飲酒したときに特に酔いがひどかったそうです。 炭水化物の摂取後に体内でアルコールが醸造されるはずなのに、食事を抜いたときに酔いがひどくなるのは不思議ですね。 空きっ腹にアルコールが効きやすいということでしょうか?

医師が行った対処法

この「自家醸造症候群」を治すために医師は、まず低炭水化物の食事によってイースト菌のエサを絶ったうえで、抗真菌薬を用いて過剰に繁殖しているイースト菌を排除しました。

同じようなケースはけっこうある

この男性の症例は、"International Journal of Clinical Medicine" に掲載されました。 同様の症例は、過去30年間のあいだにいくつか見られます。 短腸症侯群の13才の少女や、果物ジュースを飲むたびに酔っ払っていた3才の子供などです。 S. cerevisiae 以外に、カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌(C. albicans、C. krusei、C. glabrata)も自家醸造症候群の原因となります。

これらの症例ほど顕著でなければ、軽微な自家醸造症候群の人は珍しくない可能性があります。 1990年に行われた臨床試験では、510人の61%で、ブドウ糖を摂取したのちに血中アルコール濃度が増加しました。 ただし、この研究では平均で 2.5 mg/dl(0.025%)という、ほろ酔いにも満たない血中アルコール濃度で、しかも、炭水化物を摂取していない状態では血中アルコール濃度はゼロだったので、自覚症状も無いかもしれません。

普通の人がビール酵母のサプリメントや、地ビール、あるいは地酒を飲んだり、漬物などの発酵食品を食べても自家醸造症候群にならないのは、既存の腸内細菌叢が体内に入ってきたイースト菌を排除するからだと思います。

この男性の場合には、抗生物質で腸内細菌叢が壊滅状態になってリセットされるという時に、大量のイースト菌を摂取したか、あるいはイースト菌に好適な環境(エサとなる炭水化物が豊富な環境)にあったなどの理由で、腸内においてイースト菌が支配的になったのでしょう。