天然に存在する放射線ではガンのリスクは増加しない?

(2016年3月) "International Journal of Low Radiation" に掲載された National Centre for Nuclear Research(ポーランド)などの研究によると、バックグラウンド放射線(後述)はガンのリスク要因ではないかもしれません。

この研究でバックグラウンド放射線の量が多い地域におけるガン罹患率(*)を調べたところ、一般に思われているほど罹患率が高くなかったのです。

研究者は次のように述べています:
「ベイズ統計学を用いてデータを分析すると、低線量および低線量率(†)によるガンの死亡リスク(*)が存在しない、あるいは疫学的手法のみによる通常の分析を行った場合よりも随分と低いという結果になりました」

(*) 原文の情報が不十分なのですが、おそらくガンの発症リスクと死亡リスクのどちらについてもバックグラウンド放射線の量が多い地域で増加していなかったのでしょう。

(†) 「低線量」や「低線量率」というのは「バックグラウンド放射線の量が少ない地域」という意味ではなく、原発事故やX線撮影などによる大量の放射線に対するバックグラウンド放射線のことを指しているのだと思います。
バックグラウンド放射線とは

バックグラウンド放射線とは、自然に存在する微量の放射線のことです。 バックグラウンド放射線は地面・大気・宇宙線に由来し、地球のいたる所に存在します。 地球上の生命はバックグラウンド放射線が存在する環境で進化してきたため、バックグラウンド放射線によるダメージを修復したりバックグラウンド放射線から身を守る様々なメカニズムを有しています。

バックグラウンド放射線の量は地域により大きく異なり、場合によっては放射線の量に2桁も差があることもあります。 例えば、バックグラウンド放射線の平均的な量は年間実効線量にして2.5ミリシーベルトですが、イランのラムサールという市ではこれが数百ミリシーベルトにも達します。

バックグラウンド放射線はむしろ有益?

大量の放射線を浴びると放射線宿酔(放射線病)により死亡したりガンになったりするというのはその通りですが、普段から自然にさらされている程度のバックグラウンド放射線がガンなどの病気の原因となるか否かは未だ明確ではありません。

それどころか複数の研究で、バックグラウンド放射線がある程度まではガンの他の原因から人体を保護してくれるという可能性が示唆されています。 研究チームが今回行ったレビュー(他の文献の調査)でも、バックグラウンド放射線の量がわずかに多い地域よりも少ない地域の方がガンの罹患率が高いのが普通であるという結果でした。