認知機能が衰えるペースと脳由来神経栄養因子(BDNF)

(2016年1月) "Neurology" 誌に掲載されたラッシュ大学医療センターの研究により、認知機能(記憶力や思考力)が衰えるペースが遅い高齢者の脳には脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれるタンパク質が多く存在していることが明らかになりました。出典: Growth Factor in Brain Tied to Slower Mental Decline
BDNFは運動により増加することがマウス実験で示されていますが、BDNF遺伝子のタイプによっては運動をしても記憶力が改善されないというもあります。 BDNFはココアが認知症に効く理由の1つかもしれません。
研究の方法
平均年齢81才の高齢者535人を他界するまで平均6年間にわたって追跡調査しました。 思考力と記憶力を年に1回検査し、他界後に脳におけるBDNF遺伝子の発現量(*)を調べました。
(*) 脳におけるBDNFの生産量ということでしょう。 「遺伝子の発現」とは遺伝子の設計図に基づいて体内で特定のタンパク質が作られることです。
結果
BDNF最少と最多では認知機能低下のペースに2倍の差

脳のBDNF遺伝子の発現量において上位10%のグループの認知機能が衰えるペースは、BDNF発現量において下位10%のグループの約半分でした。

脳に蓄積する有害物質の影響を緩和?
BDNF遺伝子発現量が多いグループでは、脳内に蓄積するプラークや「もつれ」(*)が認知機能の低下に及ぼす影響も少なくなっていました。 アルツハイマー病の兆候となる物質(†)の脳における蓄積量が最も多いグループのみに限った分析において、脳に存在するBDNFの量が最も多いサブグループはBDNF量が最も少ないサブグループに比べて、認知機能が衰えるペースが40%ほど鈍化していたのです。

(*) 「プラーク」はβアミロイドのことで、「もつれ」はτタンパク質のもつれのことでしょう。 どちらもアルツハイマー病に関わっています。

(†) βアミロイド。
BDNFの認知機能へのインパクト
研究チームの推算によると、認知機能の衰え方に及ぼす影響において占める比重が、プラークや「もつれ」が27%、人口統計学的な要因(性別・年齢・人種・年収など)が3%であるのに対して、BDNFは2%です。