βブロッカーは心臓病では一部の患者にのみ効果

(2012年10月) ニューヨーク大学の研究により、安価で普及しているβブロッカー(ベータ遮断薬)が効果の無い患者にまで使用されている可能性が指摘されています。

アテノロールやメトロプロノールなどのβブロッカーには心拍数を下げ、血圧を降下させる作用がありますが、この研究によれば、安定した心臓病の人がアテノロールやメトロプロノールなどのβブロッカーを服用しても、心臓病による死亡率も心臓発作になる率も下がりません。

βブロッカーは、一回だけ心臓発作になった人や、ある種の心不全に有効であるとして知られており、また、過去の研究によりβブロッカーを長期間使用するのが有益であることが示唆されているため、この薬を患者に無期限に服用させる医師が少なくありません。

今回の研究

βブロッカーは特許がすでに切れているため、製薬会社には高いコストをかけてこの薬の臨床試験を行うインセンティブがありません。 そこで、研究グループは次善策として、冠動脈疾患(CAD)の患者であるか、または心臓病をリスク要因として持つ約45,000人のデータを分析して、この薬のおよその有効性を把握を試みました。

結果
その結果、心臓発作のグループ、CADはあるけれども心臓発作に襲われたことの無いグループ、糖尿病や高血圧などのリスク要因があるだけのグループのいずれにおいても、βブロッカーの効果が認められませんでした:
  • CADの患者たちにおいて、βブロッカーを服用していて心臓病、心臓発作、または脳卒中で亡くなった人は12.9%で、βブロッカーを服用していない場合には13.6%でした。 βブロッカーを服用している場合のほうが死亡率は低いですが、この程度の違いでは統計学的に有意であるとは認められません。
  • リスク要因だけの人たちにおいては、βブロッカー服用者で14.2%だったのに対して、非服用者では12%でした。
  • 過去に心臓発作に襲われたことのある人たちでは、βブロッカー服用による死亡率の違いはありませんでした。 ただし、心臓発作に襲われたのが過去一年以内である人に限っては、βブロッカー服用者の方が、心臓が原因で具合が悪くなったり病院に運ばれたりする率が僅かに減っていました。
周辺情報

βブロッカーは安価ですが疲労感・鬱・悪夢などの副作用があるため、高血圧向けの処方を含めて、βブロッカーを忌避する動きもあります。

専門家の話では、この研究結果は米国心臓病協会の最近のガイドラインと同じ方向性です。 同協会ののガイドライン(2011年版)によると、βブロッカーが効果的なのは ①心臓発作に襲われてからの三年以内の患者と、②ある種の心不全の患者であり、それ以外の使用は任意です。

βブロッカーは心臓病以外に、高血圧・胸の痛み・頭痛・不安症・PTSDなどにも処方されることがあります。