血圧が不安定な高齢者は認知機能が衰えやすい①

(2013年8月) "*The BMJ*" に掲載された欧州の研究によると、心臓病リスクの高い高齢者の場合には血圧が不安定であると認知機能が衰えます。 平均血圧だけではなく血圧の変動幅も重要だというのです。
Behnam Sabayan, Liselotte W Wijsman, et al. Association of visit-to-visit variability in blood pressure with cognitive function in old age: prospective cohort study. BMJ 2013;347:f4600
これまでの研究では、様々な要因によって脳への血流が撹乱(かくらん)されることで認知症の発症および悪化のリスクが増加することが示唆されています。 血圧の変動(*)が大きい人では脳卒中のリスクが増加することを示した研究もあります。
(*) 医療機関で複数の日に収縮期(最高)血圧と拡張期(最低)血圧を測定して割り出した数値。

血圧の薬によって血圧の変動を抑えて、心血管イベント(心臓発作や脳卒中)のリスクを低下させることが出来ますが、いくつかの研究では認知機能が衰えるリスクも血圧の薬によって下がることが示されています。

研究の方法

3年間にわたって 70~82歳(平均年齢75歳)の高齢者男女 5,461人の血圧を3ヶ月ごとに計測しました。 そして注意力・処理速度・記憶力などの認知機能をテストして、血圧の変動幅と照らし合わせました。

結果
主な結果は次の通りです:
  • 測定のたびに収縮期血圧の変動幅が大きい場合は、収縮期血圧が安定している場合よりも全部(注意力・処理速度・記憶力)のテストの成績が悪かった。
  • 収縮期血圧と拡張期血圧の両方の変動幅が大きい場合には、海馬(学習と記憶を司る脳の領域)の体積が少なく、大脳皮質梗塞が生じている傾向にあった。
  • 拡張期血圧の変動幅が大きい場合には脳に微小な出血が見られる傾向にあった。

これらの結果は、心血管疾患の有無や平均血圧などの要因を考慮したうえでのものです。

どの程度の変動幅が問題なのか?

参加者 5,461人は血圧の標準偏差に応じて変動幅が大きい人・普通の人・小さい人という3つのグループに分けたところ、変動幅の大きい人で認知テストの成績が悪いという結果でした。

そして「変動幅が大きい人」の標準偏差の範囲は、収縮期血圧では16.3~64.4mm Hg、拡張期血圧では8.6~33.1mm Hg でした。
標準偏差の計算
標準偏差は単なる引き算とは違います。 例えば、130 mm Hg と 150 mm Hg の差は20mm Hgですが、標準偏差は10mm Hg になります。 でも標準偏差はオンライン計算機によって簡単に算出するこので心配ご無用です
解説
不安定な血圧が認知機能の衰えの原因であるのか、認知機能が衰えるために血圧が不安定になるのかは不明です。 研究者はいくつかの仮説を挙げています:
  1. 心血管疾患のリスク要因が、血圧の変動および認知機能低下の両方の原因となっている。
  2. 重要な臓器において長期間にわたって血流が不安定となっているのが、血圧の変動に表れている。
  3. 血圧の変動のために脳で血量が欠乏し、これによって認知機能が衰えている。