高齢者・自閉症患者・統合失調症患者は脳のビタミンB12が少ない

(2016年1月) "PLOS ONE" に掲載されたノースイースタン大学などの研究により、高齢者・自閉症患者・統合失調症患者では脳に存在するビタミンB12の量が同年代の平均的な水準よりも少ないことが明らかになりました。
Zhang Y, Hodgson NW, Trivedi MS, Abdolmaleky HM, Fournier M, Cuenod M, et al. (2016) Decreased Brain Levels of Vitamin B12 in Aging, Autism and Schizophrenia. PLoS ONE 11(1): e0146797. doi:10.1371/journal.pone.0146797 (Licensed under CC BY 4.0)

体内に存在するビタミンB12の量は血中量で測定されるのが一般的ですが、ビタミンB12の血中量は高齢者・自閉症者・統合失調症患者も平均的な水準にあります。 高齢者の脳におけるビタミンB12の減少はアルツハイマー病などの認知症のリスクにも関与している可能性があります。

研究の方法
64人の死者の前頭皮質の組織サンプルを分析して5種類のビタミンB12(*)の量を比較しました。 64人の内訳は、自閉症患者12人(4~9才)・統合失調症患者9人(36~49才)・自閉症でも統合失調症でもない健常者43人(19週目の胎児~80才の老人)というものでした。
(*) メチルコバラミン(MeCbl)、アデノシルコバラミン(AdoCbl)、シアノコバラミン(CNCbl)、ヒドロキソコバラミン(OHCbl)、グルタチオニルコバラミン(GSCbl)
結果①: 年齢による違い
60才超の中高齢者では若い年代に比べて脳に存在するビタミンB12(特にメチルコバラミン)の量が大きく減っていました。
グラフ中の米印(*)は数値が統計学的に有意であることを示しています(* p < 0.05、 ** p < 0.01、 *** p < 0.001)。 下掲のグラフも同様。
解説

ビタミンB12は食品(主として肉・乳製品・卵・魚などの動物性食品)から摂取したものが脳へと運ばれますが、高齢者ではビタミンB12の脳への輸送に関わるメカニズムが衰えるために脳に存在するビタミンB12の量が低下している可能性があります。

このビタミンB12の脳への輸送に関わるメカニズムにはメガリンやトランスコバラミン受容体が関与していますが、このメカニズムの機能低下による悪影響として次の2つが考えられます:
  • メガリンにはアルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイドβという毒性タンパク質の排出を促進する作用があり、加齢によるメガリンの機能の衰えがアミロイドβが蓄積する一因ではないかと考えられてもいる。
  • メチルコバラミンの不足によりアルツハイマー病のリスクが増加する(*)というデータや、ビタミンB12・葉酸・ビタミンB6の補給により認知機能障害の進行が鈍化するというデータがある。
    (*) 厳密には、メチルコバラミンの不足に起因するメチオニン合成酵素の活性低下によりホモシステイン量が増加するためにアルツハイマー病のリスクが増加する。 メチルコバラミンには、メチオニン合成酵素によるホモシステインからメチオニンへの合成を助けるという役割があります。
40才を超える頃から脳との体とをつなぐ輸送ルートの機能が低下するために、脳に運ば込まれるビタミンB12の量と脳から運び出されるアミロイドβの量が減少して、アルツハイマー病などの認知症のリスクが増加する可能性が考えられるというわけです。
結果②: 統合失調症と自閉症

統合失調症患者と自閉症患者でも、同年代の健常者に比べて脳に存在するビタミンB12の量が少なくなっていました。 自閉症患者は子供であったにも関わらず、50代の健常者と同程度のビタミンB12の量でした。

統合失調症患者のグラフと自閉症患者のグラフとでコントロール・グループの数字が違うのは、統合失調症患者と自閉症患者で年齢層が異なるのでコントロール・グループに含まれる人も異なるため。

メチルコバラミンは脳の正常な発達にも関与しています。 若い頃にメチルコバラミンが不足すると、将来的に学習能力や記憶力に支障が生じる可能性があります。

グルタチオン不足とビタミンB12不足

自閉症患者でも統合失調症患者でもグルタチオンという抗酸化物質の量が低下することが知られていますが、今回の研究の一環として行ったマウス実験では、遺伝子改造によりグルタチオンを不足させたマウスでは脳に存在する各種ビタミンB12の総量が少ないことが示されました。

留意点
統合失調症や自閉症の治療においてグルタチオンやメチルコバラミンが有益となるかどうかは、今後の研究で調査する必要があります。