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ビタミンDでトリプル・ネガティブ乳ガンに抗ガン剤が効くようになる?

(2013年1月) "The Journal of Cell Biology" に掲載されたセントルイス大学などの研究により、トリプル・ネガティブ乳ガンの増殖スイッチとなる分子経路が特定されました。 さらに、このスイッチをビタミンDでオフにできそうであることも明らかになりました。

今回発見された分子経路(名前はまだ無いようです)が活性化する(スイッチがオンになる)と、腫瘍細胞は好き勝手に成長し既存の治療法がさらに効き難くなります。

今回の研究では、ビタミンDとプロテアーゼ阻害薬(HIVの薬)を用いて、この分子経路のスイッチをオフに出来ることも判明しました。

研究グループはさらに、ビタミンDやプロテアーゼ阻害薬を用いた治療の効果が大きい患者(件の分子経路が活性化している患者)を特定する3つのバイオマーカー(次ページ参照)を発見しました。

発見の詳細
DNA修復因子「53BP1」
BRCA1が変異した細胞が腫瘍を形成するメカニズムは長年の謎でしたが、53BP1 という DNA修復因子の欠如により、BRCA1が機能していない細胞が生存および増殖できることが最近明らかにされています。 トリブル・ネガティブの乳ガンでは 53BP1 が減少しているために腫瘍にPARP(poly ADP ribose polymerase)阻害薬などの抗ガン剤への耐性が生じます。

プロテアーゼ阻害薬で 53BP1 が回復できる仕組み

今回の研究では、BRCA1 が変異しているトリプル・ネガティブの乳ガンにおいて、この 53BP1 の減少の原因となっている経路が発見されました。 BRCA1 の機能不全によって、カテプシンL(CTSL)というプロテアーゼの発現が増加し、そのために 53BP1 が低下していたのです。

BRCA1 と 53BP1 の両方を持たない(ガンの)細胞は、DNAを修復し、染色体の完全性を維持し、増殖することが出来ます。 つまり、CTSL というプロテアーゼが BRCA1 に異常のある細胞の生存を助けているわけです。

ビタミンDで 53BP1 が回復できる仕組み

研究グループは以前の研究で、ビタミンDが健全な細胞において CTSL による 53BP1 の低下を阻害することを示していましたが、今回の研究では、BRCA1 が機能していない腫瘍細胞においてもビタミンDにより 53BP1 の量を回復できることが明らかになりました。 腫瘍細胞中の 53BP1 の量を回復することで、腫瘍細胞の染色体を不安定にし増殖を減らすことができます。

上述のように、PARP阻害薬などの抗ガン剤への耐性が生じている原因が 53BP1 の減少にあるわけなので、ビタミンDで 53BP1 の量を回復してやることで、トリプル・ネガティブの乳ガンから抗ガン剤への耐性を除去できる可能性があります。

3つのバイオマーカー
前述の3つのバイオマーカーとは、CTSL、53BP1、およびビタミンD受容体(VDR)のことです。 これらの量を測定することで、ビタミンDやプロテアーゼ阻害薬が有効なトリプル・ネガティブの乳ガン患者を判断することが出来ます。