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母乳育児のメリット

母乳育児が有益である理由

母乳に含まれる有益な成分

母乳には赤ちゃんの成長に必要な栄養素以外にも様々な酵素・ホルモン・抗体・成長因子が含有されているため、母乳で育てられた子供は免疫力が強化されて下痢や急性中耳炎などの感染症、あるいはアレルギーなどの病気にかかりにくくなります。 母乳には抗炎症成分や抗酸化成分も含まれています。

粉ミルクのメーカーは、栄養バランスを最適化したりDHAを添加したりと粉ミルクを母乳に近づけようと努力していますが、現時点では粉ミルクと母乳の間に埋められない差があります。

母乳の成分以外によるメリット

授乳という行為それ自体も母親と赤ちゃんの両方にとって有益です。 母乳育児に伴う母子間のスキンシップが赤ちゃんの体温や血糖値を維持したり母子の絆を強めたりするのに有益です。

母親への健康効果

授乳が母親の健康にとっても有益なのは、出産後の女性は赤ちゃんに母乳を与えるように出来ているためだと考えられます。 授乳する母親ではホルモンの量に変化が生じることが知られています。 授乳はカロリーを消費するため、ダイエット効果も期待できます。

子供へのメリット

1. 認知能力や運動能力の発達が促進される

ブラウン大学の研究によると、3ヶ月間だけでも母乳のみで育てることで、赤ちゃんの脳の白質(言語や、感情、理解力を司る部分)の発達が20~30%も促進されます。

さらに、1年以上を母乳で育てられた子供では、特に運動機能を司る脳の領域において大きく発達していました。

2. 赤ちゃんの腸内細菌のエサになる

母乳に含まれるオリゴ糖は赤ちゃんの腸内に住むビフィズス菌のエサとなり、腸内の健康維持に役立ちます。 母乳に含まれるオリゴ糖はビフィズス菌を介して、赤ちゃんが感染症や炎症になるのを防いでくれると考えられます。

完全母乳で育てられた赤ちゃんの方が離乳食に移行しやすく、後々の健康にも影響する可能性があるとする研究もあります。

3. 子供の免疫系が健全に発達する

子供の免疫系の発達には腸内細菌が必要ですが、母乳には母親の腸内細菌が含まれています。 ルートは不明ですが、母親の体内で腸から母乳にたどりついたビフィズス菌などの細菌が含まれているのです。

子供の腸内に存在する細菌は、母乳に由来するものだけではなく、出産時に母親の産道を通る際に獲得した細菌もありますが、新生児の便から検出される細菌が母乳から検出される細菌と一致するため、子供の腸内環境において、子供が母乳を経由して母親から受け取った腸内細菌は重要な位置を占めていると考えられます。

したがって、母乳には新生児の腸内環境の形成を促し、免疫系の発達に寄与する効果があると言えるでしょう。

4. 大人になってからも慢性炎症が少なくなる

2014年4月に発表された米国の研究で、粉ミルクだけで育てられた人に比べて、3~12ヶ月を母乳で育てられた人では、成人後の炎症の程度が20~30%も下がるという結果が出ています。 20~30%という低下幅は炎症の薬を飲んだときと同程度あるいはそれ以上の数字です。 慢性炎症は心臓疾患や糖尿病のリスク要因であると考えられています。

5. 4~5才の時点でテロメアが長い

テロメアとは染色体の末端部分のことです。 テロメアは細胞の老化や健康の指標として用いられ、大体において長いほど良いとされています。

6. 子供がADHDになるリスクが減少する

イスラエルのテル・アビブ大学の研究グループによると、母乳が注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスク減少に有効です。 研究グループが行った2つの研究で、ADHDの児童は兄弟姉妹と比べて乳児のときに母乳を与えられていることが少なかったのです。

このことから、母乳を与えることで子供がADHDになるリスクが減少する、あるいは人工乳を与えることでADHDのリスクが増加する可能性が考えられます。

7. イビキをかきにくく、ADHDのリスクが低下する

イビキをかく幼児ではADHD的な振る舞いが増えるけれども、母乳で育てられた子供ではイビキをかくことが少ないという結果になった研究もあります。

8. 将来、うつ病になりにくくなる

ドイツで行われた研究で、乳児のときに母乳で育てられると大人になってから鬱病にかかりにくくなる可能性が示されています。 鬱病でない人の73%が母乳で育てられていたのに対して、鬱病の人では、母乳で育てられたのは46%だったのです。 研究者によると、うつ病になるリスクに関しては母乳育児の期間の長さは影響しません。

9. 賢い子供に育つ

米国の研究によると、母乳を与える期間の長さに比例して、言語能と知能のテストの成績が僅かに良くなります。 7歳の時点で行った知能テストにおいて、赤ちゃんのときに母乳を与えられていた期間が1ヶ月間長くなるごとに、知能テストの成績が0.35点増加していました。

したがって、半年間母乳を与え続けると、知能テストの成績が2点ほど上昇するということになります。 ただし、基準となる点数が100点なので2点というと2%に過ぎません。

10. 賢い大人に成長した挙句、月収が高くなる

ブラジルで行われた研究で、母乳で育てる期間が長いほど(ただし最長で生後12ヶ月まで)子供が育ってからの知能と教育水準が高く、月収も多いという結果でした。

11. 将来、社会的に成功しやすい

母乳で育てられた子供のほうが将来、社会的地位が高くなる傾向にあることを示す研究もあります。 この研究で、33~34歳の時点での社会的な地位を子供の父親が占めていた地位(職業)と比較したところ、母乳で育てられた子供では、大人になってからの社会的な階級が父親よりも上になる率が24%高く、下になる率が20%低くなっていたのです。

12. 吃音症(どもり)になっても治りやすい

イリノイ大学の研究によると、母乳で育てられた子供(特に男の子)では、吃音症が治る確率が増加します。 この確率は、母乳を与えていた期間が長いほど高くなります。 母乳に含まれる DHA が、母乳で吃音症が治りやすくなる理由ではないかと考えられています。

13. 肥満になりにくい

岡山大学の研究で、生後6~7ヶ月まで母乳で育てられた子供は7~8歳の頃に肥満である率が低いという結果になっています。

ドイツで行われた研究でも、4ヶ月以上を母乳で育てられた子供では7~10才の時期に限って肥満リスクが低下するという結果になっています。

14. 赤ちゃんが暴露されるヒ素の量が減る

米国の研究で、母乳に含まれるヒ素の量は粉ミルクに含まれる量よりも少ないという結果になりました。 ヒ素は粉ミルクや粉ミルクを溶かすのに用いられる水道水に含まれています。

15. 未熟児が壊死性腸炎で死亡するリスクが下がる

母乳を与えられた未熟児では、人工乳を与えられた未熟児よりも、壊死性腸炎(NEC)で死亡する率が低いことが知られていますが、これは母乳に豊富に含まれる硝酸ナトリウムのお陰です。

腸の組織が壊死(死滅)するのは腸への血液供給がストップするためですが、母乳に含まれる硝酸ナトリウムが赤ちゃんの体内で、亜硝酸塩 ⇒ 一酸化窒素へと変換されてゆき、この一酸化窒素が血管を拡張して血流が改善されるために、NEC の死亡率が低下するのだと考えられます。

16. 急性リンパ性白血病にかかりにくい

急性リンパ性白血病は、免疫系の一部である白血球が関与する病気です。 母乳により赤ちゃんの免疫系の発達が促進された結果、急性リンパ性白血病のリスクが低下しているのかもしれません。

17. 小児性白血病にかかりにくい

母乳と小児白血病のリスクとの関係を調べた18の研究のデータを分析したメタ分析で、母乳育児を半年以上続けた場合には小児白血病を発症するリスクが19%低下するという結果になりました。

18. 歯並びが良い子に育つ

哺乳瓶を使わずに母乳のみで育てると歯並び(噛み合わせ)が良い子供に育つ(ただしオシャブリを使うと効果が薄れる)という結果になった研究があります。 5才の時点で噛み合わせ異常が生じているリスクが、3ヶ月以上の母乳育児で41%、半年以上で72%リスク低下していました。

19. 虫歯になりにくい

合計7万3千人超のデータを分析したメタ分析(過去に発表された複数の研究のデータをまとめて分析する研究)で、母乳で育てられた子供は3才~6才のときに虫歯であるリスクが30%低いという結果になっています。

ただし、このメタ分析では12ヶ月以上にわたり母乳で育てられた子供は虫歯になるリスクが86%高いという結果にもなっているので、授乳期間が長くなり過ぎないようにすると良いでしょう。

20. 炎症性腸疾患(IBD)になりにくい

母乳で育てられた時期がある人はクローン病のリスクが29%(アジア人に限ると69%)、そして潰瘍性大腸炎のリスクが22%低いというデータがあります(クローン病も潰瘍性大腸炎もIBDの一種)。 IBD予防という観点からは、母乳育児を12ヶ月以上続けると効果的であるようです。

21. 喘息が悪化しにくい

"Pediatric Allergy and Immunology" 誌(2017年)に掲載された研究に、母乳で育てられていた子供は喘息が悪化するリスクが45%低いという結果になったものがあります。 この研究では4~12才の喘息の子供960人を調査しました。

22. 気質が良好な大人に育つ

"European Journal of Personality"(2016年)に掲載された研究で、母乳で育てられた人は、神経質・不安症・敵意といった性質が弱く、開放性・楽天性といった性質が強い傾向にあるという結果になっています。

ただし、神経質については母乳育児の期間が長過ぎるのも良くないようで、母乳育児の期間が9~12ヶ月の場合に神経質な性質が弱く、人工乳のみで育てられた場合や母乳育児の期間が2年を超える場合に神経質な性質が強く見られました。

母親へのメリット

1. アルツハイマー病を発症しにくくなる

ケンブリッジ大学の研究によると、子供を母乳で育てることによって、(子供ではなく)母親がアルツハイマー病になるリスクが減少します。

糖尿病と女性ホルモンの過多も認知症やアルツハイマー病のリスク要因ですが、子供に母乳を与えることによるプロゲステロンの減少あるいはインスリン感受性の回復が、アルツハイマー病のリスクが減少する理由ではないかと考えられています。

2. 乳ガンになりにくくなる

妊娠によって乳ガンになるリスクが減少しますが、母乳育児によっても乳ガンのリスクが減少します。 リスクがどの程度減るのかは研究によって結果が異なりますが、減ることは間違いないようです。

3. 卵巣ガンになりにくくなる

BRCA1 という遺伝子の変異により卵巣ガンのリスクが増加している女性(白人では400人に1人)では、母乳育児によって卵巣ガンのリスクを低減できる可能性があります。

4. 産後欝になりにくい

母乳育児をする予定でいて予定通り母乳育児をできた母親では、母乳育児をしない母親に比べて、産後欝(うつ)になるリスクが半分ほどに低下します。 逆に、母乳育児をする予定でいたのに出来なかった母親では、母乳育児をしない母親に比べて産後欝のリスクが倍増します。

5. 関節リウマチになりにくくなる

母乳で子供を育てると母親の関節リウマチのリスクが減少するという研究もあります。 母乳を与える期間が長いほど、リスク減少の効果も大きくなると考えられます。 ただし、同様の研究が複数行われていて、その中には母乳育児で関節リウマチのリスクは減らないという結果になったものもあります。

6. 糖尿病になりにくくなる

妊娠糖尿病になった女性 1,000人超を対象に行われた研究で、母乳育児の割合が大きいほど、そして母乳育児の期間が長いほど出産後に糖尿病になるリスクが減るという結果に。

7. 心臓病や脳卒中になることが少ない

"Journal of the American Heart Association" に掲載されたオックスフォード大学などによる研究では、平均年齢51才の女性29万人弱を8年間にわたり追跡調査したデータを分析して、母乳育児の経験がある女性は経験がない女性に比べて、心臓病のリスクが9%および脳卒中のリスクが8%低いという結果になっています。 母乳育児をした期間が2年以上に及ぶ女性に限ると、この数字は18%と17%でした。 母乳育児の期間が6ヶ月間増えるごとに、心臓病のリスクが4%、脳卒中のリスクが3%下がるという計算になります。

8. 多発性硬化症になりにくくなる

"Neurology" 誌(2017年)に掲載された米国の研究では、15ヶ月以上にわたり母乳育児をした女性は母乳育児の期間が4ヶ月未満の女性に比べて、多発性硬化症(MS)のリスクが53%低いという結果になっています。 この研究では、MSと診断された女性397人とMSではない女性433人に母乳育児を行った期間について尋ねました。

9. 子宮内膜症になりにくくなる

"*The BMJ*"(2017年)に掲載された研究では、7万人超の米国人女性を20年間にわたり追跡調査して、母乳育児を行う期間が3ヶ月増えるごとに子宮内膜症になるリスクが8%(完全に母乳のみで育児をした場合には14%)下がるという結果になっています。

さらに、複数の子供を育てるなどで一生のうちに母乳育児をする期間が3~36ヶ月となる場合にも、母乳育児の期間が1ヶ月未満の場合に比べて子宮内膜症のリスクが13~40%(母乳育児の期間が長くなるほど低下幅が大きい)低下していました。 完全母乳育児の場合には3~18ヶ月の授乳期間で23~27%のリスク低下でした。