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帝王切開で生まれた子供は腸内細菌が不足し、免疫系の発達に支障をきたす

(2013年8月) "Gut" 誌に掲載された研究によると、帝王切開で生まれた子供では生後2年間において、経膣分娩で生まれた子供に比べて、有益な腸内細菌の多様性が劣っています。

特に、腸の健康に関わる バクテロイデス菌(Bacteroidetes phylum)と、アレルギー反応を抑える化学物質の血中量が不足していたことから、研究グループは、帝王切開で生まれた子供では免疫系の発達に問題が生じる可能性があるとしています。

腸内細菌は免疫系を教育して、アレルギー・糖尿病・炎症性大腸疾患(IBD)などに見られるような免疫系の過剰反応が起こらないようにするうえで大切な役割を果たしています。

今回の研究

この研究では、24人の乳児の腸内細菌の生息具合を、生後1週間、一ヶ月、三ヶ月、半年、および1年後の時点で調べました。 24人のうち9人が帝王切開で生まれた子供でした。

調査の結果、研究グループは、帝王切開で生まれた子供は、母親の産道を通っていないために、主要な腸内細菌の1つであるバクテロイデス菌を獲得しそびれるか、あるいは獲得が遅れるのだという結論に至りました。

生まれる直前まで胎児の腸内は無菌状態にあり、母親の産道を通るときに細菌に暴露されることによって、生後の赤ちゃんの腸内に細菌叢が形成されるのだと考えられています。

帝王切開で生まれた子供の中には、生後1年が経過してようやくバクテロイデス菌の獲得が確認された子もいます。 腸内細菌の多様性も、帝王切開で生まれた子供では、経膣分娩で生まれた子供よりも低下していました。

この研究の実用性
帝王切開により母親のお腹から直接取り出された子供のために、(母親の産道を通るのと同じ効果を得られる)特別な措置を考案することが望まれます。 帝王切開で生まれた子供の顔に、母親の産道から分泌された液を塗るという方法(*)がプエルトリコで試みられていますが、研究者によると、さしあたっては、固形食を通常よりも早めに与え始めることで、腸内細菌の多様性を促進できる可能性があります。

(*) この方法の有効性は、"Nature Medicine" 誌(2016年1月)に掲載された NYU Langone Medical Center などの研究により確認されています。

無菌のガーゼを帝王切開を行う1時間前から産道に放置しておき、帝王切開後にそのガーゼで新生児の顔や口を拭くことによって、新生児に腸内細菌(ラクトバチルス菌やバクテロイデス菌)を植えつけるのに成功しました。

帝王切開の際には、帝王切開に起因する感染症を予防するため母体に抗生物質が投与されますが、母親から採取された腸内細菌の量と多様性については、帝王切開のグループと普通分娩のグループとの間に違いが見られなかったことから、帝王切開で生まれた子供で腸内細菌が不足する原因は抗生物質ではないと考えられます。

Th1 と Th2

この研究では生後半年・1年・2年の時点で血液検査も行い、免疫系関連の化学物質である「Th1関連ケモカイン」および「Th2 関連ケモカイン」の量を調べました。 過剰な Th2 関連ケモカインがアレルギー発症に関わっていて、Th1 応答にこれを抑える作用があると考えられています。

免疫系の発達においては、T細胞の発達と、T細胞の化学伝達物質である Th1 および Th2 のバランスも大切ですが、帝王切開で生まれた子供では Th1 の血中量が不足しているために Th1 と Th2 のバランスが崩れていました。 免疫系が成熟する段階において Th2 を抑制できずにいると、後に Th2 が関与するアレルギー疾患を発症する原因となる可能性があります。

過去の研究で、バクテロイデス菌の一種である Bacteroides fragilis に、T細胞を強化し、Th1 と Th2 のバランスを整える作用のあることが指摘されていることから、帝王切開で生まれた子供では、バクテロイデス菌が不足しているのが原因で、Th1 関連ケモカインが不足するのではないかと考えられます。
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