(2014年1月) 眠気を覚ますため、あるいは集中力を向上させるためにコーヒーなどでカフェインを摂る受験生は多いと思いますが、"Nature Neuroscience" に掲載されたジョンズ・ジョプキンス大学の研究によると、カフェインには記憶力を向上させてくれる効果まであると考えられます。
記憶力の種類には、短期記憶、ワーキングメモリー、長期記憶などがありますが、その中でもカフェインによって向上するのは受験生にとって最もありがたい長期記憶です。 今回の研究によると、カフェインを摂ってから少なくとも24時間は記憶力の向上が期待できます。
この研究ではまず、カフェインを含有する食品や製品を普段は摂っていない参加者たちを2つのグループに分けました。 そして、両方のグループに複数の画像をじっくりと見せてから5分後に、一方のグループにはカフェインの錠剤(200mg。 コーヒーを小さいカップで2杯程度)を、そしてもう一方のグループにはプラシーボ(二重盲検法で)を服用させました。
参加者のカフェインの体内量は、カフェイン服用前、服用3時間後、服用24時間後の3回にわたって計測しました。
そして画像を見た翌日に、前日に見せた画像の内容に関するテストを行いました。 テストに用いられた画像には、①前日に見せた画像、②前日には見せなかった新規の画像(new additions)、③前日に見せた画像に似ている別の画像(similar but not the same)が含まれていました。
カフェインを服用したグループの方が、新規の画像(*)を、「前日に見た画像だ」と間違うのではなく「前日に見た画像に似ている画像だ(つまり、前日には見なかった画像だ)」と正しく判断できる人の割合が多いという結果でした。
似て非なる2つの物の違いを識別する脳の能力のことを「パターン分離(pattern separation)」と言いますが、研究グループによると、この能力には深層レベルでの記憶保持が反映されます。
「今回の研究で、小さな相違点を識別する能力に焦点を当てるのでない普通のテストをしていたら、記憶力に対するカフェインの効果は明らかとならなかったかもしれません。
類似する(小さな相違点しかない)画像を用いることで、脳にとってはハードルの高いプロセスである「パターン分離」を行うことを要求することになりますが、今回の研究から、このパターン分離がカフェインによって強化されると言えそうです」「過去の類似研究では、それらのほぼ全てにおいて、記憶をするという作業を始める前にカフェインを飲んでいるため、カフェインが記憶力だけでなく記憶作業の際の注意力や集中力などに対しても効果を発揮していた可能性があります。
今回の研究では、記憶作業の後にカフェインを服用したので、注意力や集中力などに対するカフェインの効果を排除して、記憶力だけを対象とすることができました」