カルシウムがリコピンの吸収を妨げる

(2017年1月) "British Journal of Nutrition" に掲載されたフランス国立農学研究所の研究によると、トマトなどの野菜や果物の成分であるリコピンの吸収がカルシウムによって阻害される恐れがあります。

リコピンについて
リコピンはカロテノイドの一種で、抗ガン・抗酸化といった効果や心血管疾患・骨粗鬆症・精神疾患を低減する効果が期待されています。 しかしリコピンの体内での利用効率は比較的低く、近年行われた生体外実験でもカルシウムがリコピンのミセル化(*)を妨げることが示されています。
(*) 体に吸収されやすい状態になること。
研究の方法
健康な成人男女10人を被験者とするクロスオーバー試験(*)を行いました。 試験では、リコピン(†)を19mg含有するトマト・ペーストを単独で、または炭酸カルシウム500mgと同時に食べてもらい、その後の7時間におけるリコピン血中濃度の変化を調べました。

(*) クロスオーバー試験では、複数のグループに分けた被験者に研究のテーマに当たるモノを一通り体験してもらいます。 例えば、1回目の試験でグループAが効果を調べたい薬を飲み、グループBがプラシーボを飲んだのち、数日間や数週間の空白期間を設けて、2回目の試験を行うという具合です。 この2回目の試験では、グループAがプラシーボを飲んでグループBが薬を飲みます。

今回の試験で言えば、被験者10人にリコピンのみとリコピン&カルシウムの両方を試してもらったということになります。

(†) (all-E)-lycopene。 生のトマトに多く加熱により減少する。 生トマトでは (All-E)-lycopene がリコピン全体の75%を占めるが160℃で20分間焼くと52%にまで減少するというデータがあります。 (All-E)-lycopene が減る代わりに (5Z)-lycopene が増加する。
結果

トマト・ペーストのみを食べたときに比べて、トマト・ペーストを炭酸カルシウムと同時に食べたときにはリコピンの生物学的利用能が83%損なわれました。

研究の一環として行われた生体外実験でも、カルシウムによりリコピンの電荷の絶対値が39%減るという結果になりました。

結論
普段の食事で摂る程度の量のカルシウム(*)であっても、リコピンの吸収が妨げられる恐れがあります。 カルシウムによりリコピンの吸収が妨げられるのはカルシウムがミセルの電荷を減らすためかもしれません。
(*) 日本に住む成人のカルシウム摂取量は約440~590mg/日、推奨摂取量は650~800mg/日(性別や年齢により異なる)です。 100gの牛乳には110mgのカルシウムが含まれています。