カロリー制限にトリネガ乳ガンの転移を抑制する効果?

(2014年5月) "Breast Cancer Research and Treatment" 誌に掲載された研究によると、カロリー制限にトリプル・ネガティブ乳ガン(トリネガ乳ガン)の転移を抑制する効果があるかもしれません。

この研究で行われたマウス実験において、カロリーが少ないエサを与えられたマウスではトリネガ乳ガンが体の他の部分に転移しにくかったのです。

今回の研究

マウス実験において、好きなだけエサを食べさせる場合よりもカロリーを30%減らしたエサを与えたマウスでは、ガン細胞が生産するマイクロRNA17および20(miR 17/20)の量が減少していました。 miR 17/20 は、転移性のトリネガ乳ガンにおいて増加することの多い miR です。

過去の研究

同じ研究グループによる過去の研究では、カロリー制限により放射線治療の腫瘍に対する効果が増幅することが示されていますが、今回の研究において、放射線治療とカロリー制限を同時に行ったマウスでマイクロRNA(特に miR 17 と 20)の減少量が最大となることが確認されました。

マイクロRNAが減少することによって、細胞外基質の維持に関与するタンパク質の生産量が増加します:
「カロリー制限により、乳房の組織において細胞外基質を強化してくれる後成的(*) 変化が促進されます。 細胞外其質が強化されるというのは、腫瘍の周囲に檻が形成されるようなもので、ガン細胞が体の他の場所に移動し難くなります」
(*) 「後成的」とは、食事や環境などの後天的な要因が遺伝子に影響して、遺伝子の発現(遺伝子の設計図に基づいて体内でタンパク質が作られること)の仕方が変わることを言います。
カロリー制限の良さ

乳ガン患者には、乳ガン腫瘍の成長を阻止するためのホルモン療法が行われたり、化学療法の副作用を防ぐためのステロイド剤が投与されたりしますが、これらはいずれも患者の代謝に影響を与えて、患者が太る原因になります。 乳ガン患者の体重は、治療開始の1年目において平均で4.5kgほど増加します。

過度の体重増加により乳ガンの標準的な各種の治療の効果が薄れることや、体重が増加した患者で転帰(病気の経過や結果)が悪化することが近年の研究で示されています。

カロリー制限と同じ効果を持つ薬の開発も考えられますが、研究者によると、そのような薬は例えば miR17 だけというように特定の分子経路だけをターゲットにするため、遺伝子的に多様な(患者ごとの個人差が大きい)乳ガンに対して、カロリー制限ほどの効果は期待できないと思われます。

カロリー制限は薬と違って、多数の遺伝子の発現に同時に影響を与えます(複数の分子経路に同時に作用するということでしょう)。 しかもカロリー制限は、薬と違って副作用もありません。

将来的には、乳ガンの放射線治療とカロリー制限やダイエットがセットになった治療が行われるようになるかもしれません。

留意点
ただし、今回の研究はマウス実験によるものであるため、ヒトでも同じ結果になるとは限りません。 研究グループは現在、ヒトを対象にカロリー制限の効果を確認するための臨床試験の準備をしています。