ガン細胞は周囲の正常な細胞のガン化を助長する

(2015年12月) "Journal of Cell Science" に掲載されたデラウェア大学などの研究により、ガン細胞が隣接する健康な細胞のガン化を助長することが明らかになりました。

腫瘍細胞の周囲には、腫瘍細胞から排出される複数の因子(factor)によって腫瘍微小環境(tumor microenvironment)と呼ばれる領域が形成されます。 腫瘍微小環境がガン細胞の成長と増殖を助長することは知られていますが、周囲の正常な細胞にまで影響するかどうかは不明でした。

研究の方法

体内を模した3次元共培養システムを用いてガン細胞と正常な細胞を同時に培養しました。

結果

ガン細胞が、正常な細胞からE-カドヘリン(細胞同士を接着させる分子)を分離させる作用を持つプロテアーゼ(アンパク質分解酵素)を生産していました。

そしてこのプロテアーゼの作用により可溶性E-カドヘリン(*)が遊離し、その遊離物が正常な細胞に存在する上皮成長因子受容体というシグナル伝達分子に作用して正常な細胞がガン細胞(cancerous cell)に変化しました。
(*) E-カドヘリンのうち細胞外に突出している部分。 「可溶性E-カドヘリン」の英語の名称は "soluble E-cadherin" で、略称は "sE-cad"。
コメント
研究者は次のように述べています:

「大人のガン患者の血中には sE-cad が大量に存在します。 今回の研究では、腫瘍細胞が正常な上皮細胞を改変して細胞構造を撹乱することによって sE-cad を生み出すことが示されました」

「sE-cad には腫瘍の進行を助長する作用があります。 ガン細胞が細菌やウイルスと同じように正常な細胞に『感染』してガン化を促進するというわけです」