ガンの転移においてガン細胞が血管を通過するメカニズム

(2016年8月) "Nature" 誌に掲載されたマックス・プランク研究所(ドイツ)などの研究により、ガンの転移においてガン細胞が血管を通過するメカニズムが解明されました。

多くのガンは最初に発生した場所から体の他の部分に転移することで致命的となりますが、ガンの転移が生じるにはまずガン細胞が党首の腫瘍から分離して血流中に侵入し、さらに転移先において血流から脱出する必要があります。 そして、そのためにはガン細胞は微小血管の血管壁を通過しなくてはなりません。

今回の研究では、ガン細胞が血管壁に存在する特定の細胞を殺すことによって血流から出ることが示されました。

研究の概要

研究チームはまず、ガン細胞がネクロトーシスというプロセスを用いて血管壁の細胞(血管内皮細胞)を殺すことを細胞実験で明らかにしました。 次に、マウス実験により生体でも同じ現象が生じることを確認しました。

ネクロトーシスのメカニズム
血管内皮細胞が自らの死滅を招くシグナルを出していました。 ガン細胞が血管内皮細胞の表面に存在するDR6(Death Receptor 6)と呼ばれる受容体に接触したときに、ガン細胞の表面に存在しAPPと呼ばれるタンパク質がDR6を活性化していた(*)のです。
(*) 原文の記述が不十分なのですが、「DR6の活性化により血管内皮細胞が自らの死滅(ネクロトーシス)を招くシグナルを出す」ということでしょうか。
ネクロトーシスを減らすことに成功

遺伝子改造マウスを用いた実験では、DR6が作動していなければ血管内皮細胞のネクロトーシスが少なく腫瘍の転移も少ないことが明らかになりました。 DR6またはAPPのいずれかを遮断するだけでも同じ効果が得られました。

不明な点

上述のプロセスにより血管壁に生じた隙間がガン細胞の転移に直接的に関わっているのか、それとも間接的に関わっているのかは未だ不明です。

血管壁の細胞が死滅するときに死滅した細胞の周辺の細胞が様々な分子を放出するのですが、これらの分子が出すシグナルによって周囲のエリアにガン細胞が通過できる隙間が生じている可能性も考えられます。
2つの説の概念図 (1が直接、2が間接)
コメント
研究者は次のように述べています:
「今回明らかになったメカニズムはガンの転移を防ぐ治療法開発の開始地点として有望であると思われます。 しかしながらまず、DR6を遮断して副作用が生じ無いかどうかを確認する必要があります。 今回の研究はマウス実験までだったので、ヒトでもマウスと同様の結果となるかどうかを確かめる必要もあります」