ウォーキングに膝関節の軟骨を維持する効果?

(2015年10月) "AVS 62nd International Symposium and Exhibition" で発表予定のデラウェア大学の研究によると、ウォーキングに膝関節の磨耗を予防する効果があるかもしれません。

研究の背景
関節の軟骨

関節に存在する軟骨は関節表面を滑らかにする役割を果たしています。 軟骨は多孔質(スポンジのように空洞だらけ)であり、その中には関節液と呼ばれる体液がつまっています。 軟骨組織の80%は体液です。

軟骨が多孔質であるために、体を動かさないでいるときには軟骨から関節液がゆっくりと漏れ出しています。 そして関節液が不足すると軟骨の厚みが失われて関節に生じる摩擦が増加します。 この摩擦の増加は、変形性関節症(関節炎)に見られる関節の劣化と関節痛に関与しています。

運動で関節液の漏れを防げるが...

過去の研究では、関節液が軟骨から滲出するよりも速い速度で軟骨の接触面が動くならば関節液が軟骨から漏れるのを防げることが示されています。 しかしそれだけでは、体を動かしていないときに関節液が軟骨から滲出しているのに関節炎の発症に数十年もかかる理由としては十分ではありません。

関節液の再吸収?

そこで研究チームは、軟骨が関節液を再吸収するメカニズムが存在するはずだと考えました。 そしてそのメカニズムは流体力学的な加圧ではないかと推測しました。

流体力学的な加圧とは例えば、ノーマルタイヤの車が高速で濡れた路面を走ると、タイヤと路面の間に生じる圧力のために薄い膜が形成されて摩擦が失われるというハイドロプレーン現象のことです。

仮にタイヤが多孔質であれば、液体が圧力によってタイヤの中に取り込まれるのでハイドロプレーン現象は生じません。

研究の方法

液体が抜けた軟骨に流体力学的な圧力を加えることで軟骨が液体を再吸収するかどうかを調べることを目的として、軟骨サンプルとガラスの平面を用いた実験を行いました。

結果
スライドさせる速度がゆっくり(普通に歩くよりも遅い速度)である場合には軟骨が(おそらく液体の滲出により)薄くなりやがて摩擦が増大しましたが、スライドさせる速度を普通に歩いたときと同程度にまで速めると作用が逆転しました。
固定した軟骨に対して平面ガラスを押し付けてスライドさせるという実験をしたのでしょう。 時間は不明ですが、機械を使って何十時間もスライドさせ続けたのでしょうか。 「作用が逆転」というのは、軟骨に液体が再吸収されたということでしょう。
この実験では軟骨とガラスとの接触が軟骨プラグ全体ではなく軟骨の特定の箇所だけだったため、上述の過去研究で提唱された説(migrating contact theory)では今回の結果を説明できません。 そのため研究者は、滲出による関節液の喪失を相殺するのは流体力学的な圧力に違いないと考えています。