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セリアック病とグルテン過敏症

グルテンが原因となる病気の種類

グルテンが原因となる病気は①自己免疫によるもの、②アレルギーによるもの、そして③自己免疫でもアレルギーでもないものの3種類に大別されます。

①の代表例がセリアック病で、②は小麦アレルギー、そして③がグルテン過敏症にあたります。 したがって、セリアック病とグルテン過敏症は異なる病気ですし、セリアック病もグルテン過敏症もアレルギーではありません。

セリアック病とグルテン過敏症との違いを強調するために、グルテン過敏症を指して「非セリアック性グルテン過敏症」と言う事もあります。

また、①~③を指して「グルテン不耐性(gluten intolerance)」という言葉が使われることもありますが、この言葉の使用は推奨されていません。
グルテンとは
グルテンとは、小麦・ライ麦・大麦などの穀物に含まれる植物性タンパク質のことで、小麦粉の粘り気の素となります。 強力粉には多く含まれ、薄力粉にはあまり含まれていません。 グルテンは、食品だけでなくビタミン剤や、サプリメント、医薬品、リップ・クリーム、切手や封筒の糊にも使われています。

セリアック病とグルテン過敏症の違い
非セリアック性グルテン過敏症で生じるのが自然免疫反応のみであるのに対して、セリアック病は自然免疫反応と獲得免疫反応の両方が関与する自己免疫疾患です。 ひとことで言えば、セリアック病よりも非セリアック性グルテン過敏症のほうが軽い病気です。
自然免疫反応と獲得免疫反応
自然免疫反応は体に侵入してきた不特定の病原菌に対する一時的な防衛システムで、対応は早いのですが効率的ではありません。 これに対して獲得免疫反応は病原菌の種類を学習して特定の病原菌を効率的に退治しますが、その分対応が遅れます。
セリアック病では

獲得免疫反応にはT細胞という免疫細胞が関与していますが、このT細胞は体組織と病原菌の区別ができずに体組織を攻撃するようになることがあります。 そうして生じるのが自己免疫疾患です。 自己免疫疾患であるセリアック病では免疫系の機能不全により人体の組織に炎症と損傷が生じます。

グルテン過敏症では
グルテン過敏症では、自然免疫反応がグルテンに反応して食中毒などの感染症にかかったときのような症状が生じますが、獲得免疫反応が関与していないので免疫系が人体の組織を攻撃対象とすることはありません。 セリアック病に見られる小腸の損傷もグルテン過敏症では生じないケースが大部分です(生じても比較的軽症)。
グルテン過敏症には小麦に含まれるグルテン以外の成分が関与している可能性もあります。
セリアック病について

セリアック病とはグルテンが原因となる自己免疫疾患のことです。 この病気では、グルテンを摂取しても消化酵素による分解が十分に行われないために、ペプチド(アミノ酸を2つ以上含む分子)が残留します。

そして残留ペプチドによって生じる炎症のために小腸の内壁が損傷(*)して、腹痛・下痢・便秘が起きたり、小腸から栄養を吸収出来ないために貧血・栄養失調・体重減少・疲労感が生じたりします。 セリアック病を放置していると、神経障害・皮膚炎・慢性疲労・骨粗鬆症・脾臓障害・不妊・ガンなどが生じるリスクが増加します。
(*) 健康な腸では内壁に絨毛がカーペットのように生えているのが、タイル状の内壁になる。
症状には個人差がある

セリアック病の症状にはかなりの個人差があり、グルテンを食べても胃腸のトラブルが生じないという人もいます。 そういう人でも検査を行うと、鉄分不足による貧血が生じていたり、骨が弱くなっていたりします。

また稀に、セリアック病の症状として胸焼け・頭痛・関節痛・ヘルペス状皮膚炎(痒みを伴う発疹)が生じることもあります。

セリアック病の患者数

セリアック病の罹患率は世界全体では人口の1~3%ほどだといわれています。 米国では133人に1人がセリアック病で、セリアック病と診断された人の60~70%が女性です。 日本の患者数は、人口の0.7%にあたる87.5万人だと思われます。

グルテン過敏症の患者数はよくわかっていませんがセリアック病よりも多いと思われます。 罹患率を6%と推算する研究者もいます。

セリアック病のリスク要因

セリアック病は特定の遺伝子を有する人でのみ発症することが知られていますが、セリアック病患者の数がここ数十年で大幅に増加していることから、セリアック病の発症には感染症などの環境的(後天的)な要因も関与していると思われます。

セリアック病を引き起こす遺伝子

セリアック病を発症する恐れがあるのは HLA-DQ と呼ばれ免疫反応に関与する遺伝子が特有のタイプ(HLA-DQ2 と HLA-DQ8)である人だけです。 欧州人は30~40%がこのタイプの遺伝子を保有しています。 セリアック病の家族歴がある子供では、この数字は65~80%となります。(ただし、このタイプの遺伝子を保有して入れば必ずセリアック病になるわけではありません)

"Clinical Gastroenterology and Hepatology" 誌に掲載されたスェーデンの研究では、母親がセリアック病での人はセリアック病になるリスクが12倍以上増加するという結果になっています。 母親が1型糖尿病であるという人でもセリアック病になるリスクが2.5倍ほど増加していました。

腸内細菌の関与
セリアック病の発症に腸内細菌の違いによるグルテン代謝の違いが関与?」によると、遺伝子的にセリアック病を発症する恐れがある人であっても、ラクトバチルス菌などの腸内細菌が腸内に多いとセリアック病を回避できる可能性があります。
グルテンが原因となる病気の兆候

グルテン過敏症やセリアック病の人の99%は自分がそうであることに気付いていないと言われています。 グルテン過敏症やセリアック病の兆候は次のようなものです:

  • 消化器官のトラブル
    オナラ・膨満感・下痢・便秘など。 子供の場合には便秘になるケースも少なくありません。
  • 毛状角化症
    毛状角化症とは、腕の裏側などが鳥の毛をむしった後のように見える状態になる病気のことです。 セリアック病においては、グルテンによって胃腸が損傷するために脂肪が吸収されなくなり、それによって脂肪酸やビタミンA が欠乏するために発生します。
  • 食後の疲労感
    グルテンを含有する食事を食べた後に疲労感を感じたり、頭がぼーっとしたりします。
  • 自己免疫疾患
    リウマチ・潰瘍性大腸炎・狼瘡(ループス)・乾癬・多発性硬化症・強皮症などの自己免疫疾患。
  • 神経学的な症状
    眩暈(めまい)やバランス感の喪失。
  • ホルモン・バランスの崩れ
    月経前症候群・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)・原因不明の不妊など。
  • 慢性疲労や線維筋痛症
    慢性疲労や線維筋痛症と診断されるというのは、痛みや疲労感の原因が医師にもわからないということです。 グルテンが原因で痛みや疲労感が慢性的に生じている可能性があります。
  • 関節の炎症
    指・膝・股間などの関節に生じる痛みや腫れなどの炎症症状。
  • 精神面のトラブル
    不安感・鬱・気分のむら、注意力・集中力の欠如など。

上記の他にも、頭痛・皮膚の発疹・手足や指先の感覚が無くなる・貧血などの症状が現れることがあります。

グルテン過敏症/セリアック病かどうかを確認するには

グルテン過敏症またはセリアック病が疑われる場合には、グルテンを食事(や医薬品)から100%排除してみましょう。 排除の期間は最低でも2~3週間、できれば数ヶ月。 長ければ長いほどよろしい。 そして、その後に再びグルテンを食事に取り入れて、排除期間中の体調と比較します。 グルテン排除期間中の食事にグルテンが混入されている場合には、結果が不正確になります。

グルテン排除期間中の体調が明らかに良い、あるいはグルテンを再開してからの体調が思わしくない場合には、グルテン過敏症である可能性が高いと考えられます。

ただしグルテン・フリー食を実行していると、セリアック病の検査を受けることになったときに、検査に時間がかかったり検査の精度が低下したりするというデメリットもあります。

病院での検査

セリアック病を確定的に診断するには、グルテンを含む食品を食べている期間中に病院で腸の組織を検査する必要があります。 腸組織のサンプルは、喉から十二指腸にチューブを挿入して採取します。 このサンプル採取は患者にとって非常に辛いもので子供の場合には麻酔が必要となります。

しかし 2015年にノルウェーのオスロ大学が、血液検査だけでセリアック病を確定的に診断する技術を開発しています(現在、臨床試験中で、数年以内に実用化の見込み)。 この新しい技術が一般で利用できるようになれば、診療所で血液検査を受けるだけでセリアック病かどうかを診断できるようになります。 この新技術による診断では、検査前にグルテンを含む食品を食べておく必要もありません。

グルテン過敏症/セリアック病と判明したら

グルテン過敏症やセリアック病と判明したら、グルテンを食べないようにするしかありません。 グルテンを食べたら食べた分だけ具合が悪くなります。

症状が出ていない場合にはグルテン・フリーの(グルテンを含まない)食事を用意するのが無意味に思えるでしょうが、症状が出ていなくてもグルテン・フリーの食事を続けることが大切です。 症状が出ていなくてもグルテンにより栄養を摂る能力が損なわれるので、グルテンを避けるようにしましょう。

セリアック病の人がグルテン・フリーの食事をしないと消化器のガンになるリスクが増加することが知られています。 また、セリアック病やグルテン過敏症の人は月に一度グルテンを口にするだけでも早死にのリスク(相対リスク)が7倍になるという結果になった研究もあります。

グルテンを排除した食事を続けていれば、小腸の炎症が治まり始めます。 腸の繊毛が完全に再生するまでには数ヶ月から5~6年ほどを要します。
ただし、 "Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition"(2016年)に掲載された研究では、セリアック病患者の5人に1人はグルテン・フリー食に切り替えてもセリアック病による腸の損傷が治まらないことが報告されています。
グルテン代替食
グルテン過敏症/セリアック病であっても、グルテンを含まない米やトウモロコシ、ジャガイモなどの炭水化物は食べることができます。
  • キヌア

    過去の研究ではキヌアという雑穀がセリアック病の患者に適さないことが示唆されていましたが、これに反して "The American Journal of Gastroenterology"(2014年1月)に掲載された英国の研究では、セリアック病患者もキヌアを安全に食べられることが示唆されています。

    この英国の研究では、セリアック病患者19人の食事に1日あたり50グラムのキヌアを用い、その食事を6週間続けてもらい(キノアの調理方法は患者の任意)、患者たちの血液、肝臓、および腎臓の検査を行いました。

    その結果、キノアを食べても病状は悪化していませんでした。 ただし研究者は、キヌア摂取によるセリアック病への長期的な影響を調べる研究を行う必要があると述べています。
  • ルピナス

    ピーナッツ・アレルギーの人はルピナスにも要注意」によると、米国で販売されているグルテン・フリー食品の中にはルピナス(ハウチワマメ)という豆が使われているものがあります。

    ルピナスはピーナッツに近い種類の豆なので、ピーナッツ・アレルギーのある人はルピナスでもアレルギー症状が起こる可能性が高くなると考えられます。
グルテンを食べれるようになる薬

アルバータ大学の研究チームがセリアック病患者でもグルテンを食べられるようになるという錠剤の開発を進めていることをカナダのCBC NEWSが 2015年7月に報じています。

飲食の5分前に錠剤を飲むことで、その後1~2時間はグルテンを含有する食品を口にしても平気になるのだそうです。 この錠剤の臨床試験は 2016年に開始される予定です。